シアンは水生
孤独を孤独だと認識するには時間がかかった。
だけど、ひとりでも良いという自己欺瞞に似た考えは自虐的といわないだろう。共感と共有は違うのだというように。
力が孤独だというなら絶対的な権力を振りかざすあの国は実は孤独なのかもしれないとライは思考する。
忠誠を誓っていても、きれいごとを並べなくても、つまり、利己的で現実主義だからこその疎外感。ちぐはぐしているのは自分も同じで、ああ似ている、だなんて考えるのはおこがましく、なんの意味もなかった。
「求めているつもりで見捨てていたのかもしれない」
独り言。のつもりだったライは微かに揺れた空気に視線をずっと見上げていた見慣れた天井から動かした。
「なぜそう思う?」
感情のこもらない声。それなのに凛としてやさしく聞こえるのはどうしてだろう、とライはいつも思うが答えなどは出ない。分かっていることは、ひとつ。
彼女の---C.C.の色はライには色鮮やかだということ。
「力がないことを悔やんでた。でも、それでも守りたい人たちには縋らなかった。力がないことを嘆かなかった」
「それを弱さだと思ったのか?」
「そう、なのかな。うん、だろうな。縋れる強さもあったはずなのに」
その時点で、あれは既に孤独だったのだと認識する。自我だけを主張して自己の為に力を手に入れた。もう、その前から、ひとりきりだった。
「なら、今はどうだ」
C.C.の言葉に、ふと目が合った。
金色の瞳はうつくしく、やさしく細めて、C.C.は小さく微笑む。ライはそれに微笑み返し、だいじょうぶ、だと返す。
幸せすぎるくらいだよ、と零された声と共に閉じられた、うつくしい瞳の色に、C.C.は思わず泣いているのかと聞きそうになった。
(あれはきれいですんでいてとてもじゃないけれど、ひとのもついろではない)
(でもだからこそ、)
お題配布元:不在証明さま