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ペパーミントグリーンに落度はなかった

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ふとしたことでそれは輪郭を見せる。
例えば昨日より広く見える部屋だとか、知らないうちに誰かに話を振ってしまうとか、どことなく寂しくおもう隣だとか。
教室の一番後ろの席は未だに空席のはずなのに、誰かが居たような、笑いかけてくれていたような、そんな記憶の断片。だけどそれはひどくおぼろげで顔も声も、存在でさえも気のせいだと思う脳内に頭を振る。
ある日、自分の部屋で見つけた買った覚えのないアクセサリーを見つけて、ルルーシュはC.C.に話を振った。

「これは、誰のだ?」

C.C.は興味がなさそうに振り返った。しかし、それを目にすると少し顔が強張るのをルルーシュは見逃さなかった。金の瞳が小さく揺れて、自嘲するかのようにC.C.は笑みを浮かべて言う。すこしだけ、苦しくしぼりだすように。

「それはお前のものだろう?」
「買った覚えがない」
「確かにな。趣味ではなさそうだ」

小さく皮肉を浮かべるかのようにC.C.は笑う。
ベットから跳ね降りて軽やかに床に下りる音が後ろからするのを聞きながら、ルルーシュはアクセサリーを手に取る。よく見るとデザインがやけに凝っていて、悪くないデザインだとルルーシュには思えた。

「もらいもの、だろう」

凛とした声が後ろから聞こえ、ルルーシュは振り返る。
長いみどり色の髪を揺らしながら、C.C.は遠くのものを見るように眼を細めた。
その視線の意味をルルーシュは考えた。時折ナナリーが突然手を伸ばして、何もないのに何かをつかみたがるその仕草をなぜか重ねた。その後に静かに泣き出すナナリーを宥めるのには苦労したのだけど、その時のナナリーの言葉がずっとルルーシュの中で生きている。
消えない日々の違和感の輪郭が言葉となって残っていた。

「それはお前のものだよ、ルルーシュ」

C.C.の鮮やかな色に夕日が重なる。いつものようにその表情から考えは読めないけれど、何故だか問われている気がした。

おもいだしたいのか、おもいだせ、だけどどうか。

窓の外は夜が来る。
その橙と蒼に染まる部屋の中で、ルルーシュは何故か、涙した。




(へえ、このデザイン俺は好きだな)
(そうなのか? じゃあ、僕から今日の思い出にプレゼントするよ。はい。)
(あ、ああ。ありがとう。ライ)



お題配布元:不在証明さま