明日は琥珀
さて誰がこんな世界を想像しただろう、とC.C.はひとりきりで古い遺跡の回廊を歩いていた。
自分の存在を主張する靴音のしか聞こえない。鳥のさえずり、動物の気配も命の存在も感じない。それは限りなく無に近い世界。さて、誰がこんな世界を創造しただろう。
もう今はそんな嘆きの声も、聞こえない。
こつん、と響く足音。C.C.はふと足を止めた。
視線の先にいつか見た色を見つける。思わず懐かしくて眼を細めた。なぜか唇が震えたがC.C.は何も漏らすことなく、無理やり口元を吊り上げる。
(泣くことは赦されていない、わたしには)
また一歩ずつ歩みを進める。ゆっくり、ゆっくりと会えなかった時間の分を埋めるように、彼の眠りを妨げないように。近くまで来て、相変わらずの色彩にC.C.は笑みを零した。慈しむようにその髪を撫でて、眠り続けている彼の病的なほど白い頬に触れる。もちろん反応はなく、C.C.はそれでいいというふうに手を離した。そのまま彼が眠る場所に膝を下ろし、そっと寄り添うように寄りかかる。
「お前とわたしだけになってしまったよ」
響く声は頼りなく、その場所に余韻を残しながら消えてゆく。命の気配は、きっとどれだけ探してももう見つかりはしない。誰も居なくなってしまった。これが力の結末。
「世界は滅んだんだ、ライ。幾度となく繰り返された力の結末さ。終焉にはふさわしいだろう?」
だけど彼はそれを知れば悲しむだろう。
それでも彼が傷つける存在も、彼を傷つける存在ももういない。
ほんとうは、なにが一番幸せだったのかC.C.も理解しているというのに。
「ルルーシュの願いだからな。・・・わたしは、お前の傍に居るよ、ライ」
だからどうか、眼を覚ますことのないように眠り続けて、せめて夢ではどうかしあわせであるように願った。
(「世界はきれいだな」)
(でもすべてなくなったよ、ライ。お前はそれでもこの世界をきれいだと言うか?)
お題配布元:不在証明さま