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はろ☆どき
はろ☆どき
novelistID. 27279
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一番夜の長い日に

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「兄さん、冬至って知ってる?」
「知ってるさ。一年で一番昼の短い日だろ?」
「そう。つまり一年で一番夜の長い日でもある」
「うんまあそだな」
「だからさ、今日は大佐待ってると思うんだ」
「・・・へ?」
「だからイーストシティへ戻ろう。夕方迄に着く便、チケット取ってあるから」
「え?え??」
「置いてくよー」
「おーい、アルさん?おいおい、ほんとに置いてくなって!」

弟の思考は時々本気でわからない。
なんで夜が一番長いからって大佐が待ってることに・・・そこまで考えてはたと思考を停止した。
もしやまさかいやでもそんな。

オレと大佐は数ヵ月前からいわゆるおつきあいというやつをしている。
言っておくが、オレは男で大佐は14歳も年上の大人の男だ。
しかしどういうわけかお互い両思いであることが判明してめでたく付き合うことになったのだ。
オレは旅暮らしだし会えるのはいつもほんの僅か。でもまあお泊まりなんかもしちゃってたりもする。
アルはオレが大佐と付き合うことになったと告白した時、さほど驚かずに「よかったね、兄さん」と言ってくれた。
反対されなくてほっとしたが、こんなにいろいろとイレギュラーな相手なのにすんなりと受け入れられるのもちょっと微妙な心境だ。
てか、オレが大佐好きだっていつから知ってたんだ…?

******

そして司令部へ着いたオレは、定時までに仕事をきっちりと終え(させられ)た大佐に迎えられ、アルや中尉や他の皆に笑顔で送り出された。
「大佐、お風呂は厳禁です」とにっこり微笑んで紙袋を渡す中尉の謎の言葉と共に。

家に着くと大佐はまず風呂を沸かしてくれた。
たっぷりの湯に先ほど中尉からもらった紙袋の中身をカットしてぽちゃぽちゃと投入する。
袋の中身は柚子だった。
「冬至の日にゆず湯に入ると風邪をひかないという習わしのある国があるんだそうだ」
そう言って大佐はオレに先に風呂へ入るよう進めてくれた。
「大佐は?」と聞くと「食事の後にするよ。中尉に撃たれたくないからな…」とよく分からないことを言って遠い目をした。
大佐が先に入ればって意味だったんだけど、なんで中尉が出てくるんだろう。

柚子のいい香りに包まれほかほかになって風呂からあがると、食事の用意がされていた。
大佐が唯一得意とする料理、オレの好きなクリームシチュー。
いつものと違って、今日は具にジャガイモではなくカボチャが入っていた。
「シチューにカボチャ?」
「これも習わしで、冬至にカボチャを食べると――」
「風邪ひかないのか?」
「そうらしいよ」
大佐は笑いながら言った。
「栄養をしっかり取れという意味もあると思うがね」
「ハロウィン以外にもカボチャが登場する日があるんだな」
そんな話をしながら楽しく食事をした。
すごく美味しかった。

******

ふと目が覚めると視界はまだ真っ暗だった。真夜中過ぎといったところか。
目の前には大佐の喉元が見えた。
オレの肩や頭を抱き込むようにして、大佐の腕がオレを囲っている。
普段はこんなの至近距離過ぎて恥ずかしいが、こんなに間近に大佐を見る機会など滅多にない。

昨夜は日付を跨ぐ前に二人してベッドに入ったのだ。
「一年で一番夜の長い日だから今日はゆっくり休もう」
食事の後、風呂から出てくると大佐はそう言ってオレをしっかり抱き込んで横になり、しばらく二人で話をしていた。
ほとんどはオレのたわいない話を大佐が聞いるばかりだったけど。
そしてそのまま灯りを消しておやすみを言って寝入ったのだ。

ほんとはちょっと・・・いやかなり、恋人らしい夜を過ごせると期待してたんだ。
でも、こんな風に二人でゆっくり眠るなんてのも滅多にないことで悪くないかもしれない。

すんと鼻で息を吸うと大佐からも柚子の香りがして、おんなじ匂いだ、となんだか嬉しくなった。
柚子の香りに包まれて、大佐の温もりに包まれて、息を深く吸って吐くと再び眠気が訪れてくる。
オレは精一杯首を伸ばしてやっと届いた大佐の顎にそっと唇で触れると、頬を大佐の胸に擦り寄せてまた夢の中へと戻っていった。

作品名:一番夜の長い日に 作家名:はろ☆どき