機動戦士ガンダムSEED DESTINY~Flugel~
キラの駆るフリーダムはカガリを狙うムラサメを撃退しつつ、アークエンジェルに通信を入れる。
「バルトフェルドさん、カガリとアークエンジェルを頼みます!」
「よしきた、ただ俺はキラほど上手くないんでね。そっちでも援護頼みますよ、ラミアス艦長」
「了解です、気をつけて。
ムラサメ発進後、本艦はミネルバへと向かいます!オーブと地球軍を牽制して」
「はい」
こうしてアークエンジェルは遂に戦闘への本格的な介入を開始した。
「アンドリュー・バルトフェルド、ムラサメいくぞ!」
基本的な性能はオーブ製のムラサメと同一であるが、機体の色がバルトフェルド特有の黄色に彩られている。
アンドリュー・バルトフェルド
彼は元ザフト軍人であり、キラとも死闘を繰り広げたほどの腕前の持ち主である。
その後ザフトを離れキラ達とともに前大戦を戦いぬき、オーブで隠居生活をしていた。
左手義手、左足義足、左目義眼とモビルスーツ乗りとしては決定的なハンディを持ちながらもその腕前に些かの低下も感じられない。
「カガリ、撃てないのならば下がれ!ここでお前が落ちたらそれこそオーブはどうなる!?」
そう言うとカガリを狙うムラサメを撃ちぬき爆散させる。
「俺はキラほど上手くないと言ったろうが…。落としちゃうぞ!」
カガリの援護にバルトフェルドが出てきた事を確認したキラは遂に戦場の中心にたった。
狙うはメインカメラや武装、スラスター。
決して撃ち落とすことはしない。
スーパーコーディネイターとして生まれきたキラには造作もないことである。
一機また一機、時には数機まとめて戦闘不能に追い込む。
アビスと交戦していたシンは高速で接近してくるフリーダムの機影を捉えた。
「な、なんだあいつは!?」
応戦しようとするが高速ですれ違いざまに機体の右腕を切り落とされる。
「ぐあああっ!」
そのまま海中のアビスを捉えたフリーダムは腰部にあるクスフィアス・レール砲を展開し海面に撃ちだす。
本来であれば実体弾であるレール砲はガンダムタイプのモビルスーツが有する、ヴァリアブルフェイズシフト装甲によって決定的なダメージを与えることはできない。
しかし、今回キラが狙ったのはモビルアーマー形態になったアビスのスラスター部であるため、推力を失ったアビスに為すすべはなかった。
カオスと依然戦闘中であったアスランもフリーダムの行動に気付き、止めにはいろうとするもカオスが立ちふさがる。
「どこに行く気だよ。お前の相手は俺だろうがっ!!」
「ちいっ!邪魔を!」
これ以上キラに暴れさせるわけにはいかない。
そう思った時、アスランの中で何かが弾けた。
今まで以上の集中力を発揮し、カオスの動きを完璧に捉える。
オールレンジ攻撃を仕掛けていた高機動ポッドもビームライフル二射で爆散させる。
「な、なんだ。こいつ急に動きが…!」
カオスが怯んだ隙を見逃さず一気に間合いを詰め、ビームサーベルで頭部と両手を切り捨てる。
もはやカオスに戦闘能力が無い事を確認したアスランはフリーダムへと一直線に飛び去った。
(キラ…なぜお前がこんなことを…っ!)
何度か通信で呼びかけようとしたが繋がらず、こうなったら実力行使で止めざるをえない。
アスランは再び友と銃を向け合うことに悩みながらもフリーダムと対峙した。
その時。
地球軍艦隊から撤退命令の信号弾が発射された。
これ以上混乱した戦場からは何も得られないどころか、損害ばかりが増えるとの判断からである。
地球軍の撤退を確認したアークエンジェルとフリーダムは戦闘空域から離脱を始める。
ただその場には、大きく被害をうけたミネルバと戦いの残骸だけが取り残された。
すれ違うフリーダムとセイバー。
その光景は今後の二人の未来を暗示するかのようであった。
作品名:機動戦士ガンダムSEED DESTINY~Flugel~ 作家名:Leyvan