フランツと休日
フランスが起きてまず考えたことは、ブランチの材料だ。
エスカルゴとラム肉、赤ワイン、それとハーブと胡椒。隣で寝ているぼさぼさの頭を撫でて、額の上にキスを落とした。今日は仔羊のハーブ仕立て、イギリスが起きる頃にはもう出来ている。起きぬけの閉じかけた瞼におはようのキスをしてやる。ゆるく手を引っ張りながら、もたつく姿にフランスが少し笑う。リビングから香るエスカルゴバターの匂いにつられてようやく布団から出る身体、その細い手の甲にまたキスをする。イギリスはといえば、まだ覚醒しきらずにぼんやりとそのさまを眺めている。それにフランスがちいさく笑ったところで、手のひらの上を唇でなぞってやる。どこか心地よさげな表情はもういちど眠りを連れていた。…こーら、起きて。フランスが言う。ついでに悪戯半分に首筋へ唇を運んで、舌を這わせてゆるく噛み付く。イギリスの肩がちいさく揺れる。笑い声、顔を上げて冗談だよとフランスが笑いながら頬に口付けを落とす。仔羊の待つリビングへとイギリスを連れて行こうとして、……ストップ。イギリスの、親指と人差し指が健気に裾を引いている。
朱に染まる頬、滲んで揺れるモスグリーンの瞳。
寝室まで届くソースの匂い、それ以上にフランスの食欲をそそる表情がそこにあった。
(…我慢できるわけ、ないじゃない)
ついさっき起こしたばかりのベットに、もういちどイギリスを押し倒す。
寝起きの暖かな身体、その鎖骨にキス。胸、腹、腰、足のつけね、内股、ひざ、足の、さき。
ふるりと震える腰、隠された顔にフランスはもっと見せてとねだる。
いじわる、そう言いながらそっと隠した手を退けるイギリスの柔いくちびるにそっと重ねられたそれは、
愛情という意味だった。
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恥ずかしいやつらですね!
とある有名な詩からの構想です。
キスの場所とか、まぁそんな感じのあれです。