敵中横断二九六千光年1 セントエルモの灯
森が話しているうちに、一同が息を呑み、目を見張る顔になっていった。〈イスカンダル〉だのなんだのかんだの、怪しげな話と思っていたものが、どうもそうでもないらしい――そう考えるようになってきているようすだ。これが確かな話なら、コスモクリーナーの話も本当ということになり、自分達は地球を救う船に乗り組んだことになる――その事実を確かめようと、隣同士で顔を見せ合い、頷きを交わし始めた。この話は本当なんだな。オレは夢を見ているんじゃないんだなと、互いに眼で語り合う。あまりに話がうま過ぎるなら信用できない。だが、これはそうではない。自分達が試されているという話なのなら、いいだろう。必ずやってのけてやろう――そんな決意を互いの瞳に見出そうとしているようすだ。
これなら大丈夫だろう――そう思って、森はしばらく一同をそのままにしておくことにした。まだ何人かは不安げにしている。あまりの話に慄いてしまったような顔もある。だが当然だ。誰だって、こんな話に平然としていられるはずは――と、思いながら見渡して、しかし森はただひとりなんの反応も示さぬ者がいるのに気づいて眉をひそめた。
古代進。このがんもどきパイロットだけは、何も考えてないように無表情なままだった。
作品名:敵中横断二九六千光年1 セントエルモの灯 作家名:島田信之