【CCさくら(アニメ、劇場版)】その直後の小狼とさくら
無のカードが消した穴を飛び越えて小狼くんに向かってジャンプした。
向こう岸には、少し慌てたような、照れたような顔の小狼くん。
ーーー小狼くんと両想いになれて、なんだか浮かれて宙をまっちゃったけど、よくよく考えたらこれってかなり…
「ほぇえぇ、恥ずかしいよぅ~///」
のばした手を火照った両頬を冷やすようにあてる。
当然のように飛び出したときの勢いはなくなり…
「あっ、バカ!!!」
小狼くんがあわててこちらに手を伸ばす。
その手もあと少し届かず、小狼くんも宙を駆けた。
すんでのところで小狼くんはわたしを抱きすくめ、見計らったかのように無のカードの効果が切れて消えたはずの床が現れそこに着地する。
「…さくら、大丈夫か…?」
見上げると、吐息が肌をくすぐるほど近い、小狼の顔。
助けてもらったのなんて何度目か判らないのに、ドクンと胸が跳ね上がった。
片思いの頃は不安が先にたって感じられなかった、小狼の優しい眼差し。
壊れ物を扱うようにそっと包んでくれる両腕。
私とは違う、温かいぬくもり。
石鹸のような優しい香り。
意識しすぎて、バクバクが止まらない。
ーーーどうしよう、さくら、変態さんになっちゃったのかも…!!
ギュイーンと頭のてっぺんまで血が昇って、どかんと噴火する音がしたような気がした。
見ると、手の指の先まで赤い。
「さ、くら?大丈夫…?」
「ほぇ…、だ、大丈夫…じゃないかも…」
ーーー動悸が。
「どうした?!怪我でもしたのか?!痛いのか?!」
慌てたように小狼くんが抱いた肩を引き剥がし、わたしの腕や足や頭を見た。
ーーー怪我なんてしてないのにな。
離れた距離がすこし寂しい。
「だいじょうぶだよ。小狼くん、優しいね」
もういちどぎゅっとして欲しくて、
でも素直に言うのは気恥ずかしくて、小狼くんの袖をそっと掴んで少し引っ張った。
近寄った小狼くんの胸元に、そっとおでこをつける。
「返事、遅くなってごめんなさい。わたし、小狼くんが好き。だいすきだよ」
小狼くんの鼓動を聴きながら、この幸せな気持ちがいつまでも続くことを祈った。
作品名:【CCさくら(アニメ、劇場版)】その直後の小狼とさくら 作家名:とはる