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めぐりめぐるいのちとまわりまわるはぐるまの世界で

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他の世界の話を聞くと物珍しさのほうが勝ってしまうのは誰もが同じらしかった。
想像しがたい食べ物や動物、魔法(という概念がない世界も存在するらしい)の種類や種族の共存の仕方など、聞いていて楽しいものばかりだ。だけどその背景に存在する陰や闇については誰も触れない。暗黙の了解がひしめいている中で、唯一リンクと世界観は違えども因縁めいた宿命が同じであるトゥーンリンクの存在は不思議と安心感と違和感を与えた。根源、といわれている同じような姿をしながらもまったく違う人間であるもう一人のリンクにも同じような感情はあったが、彼は常に罪悪感のような歪んだ感情が見えたのでリンクはあえて触れないようにしている。時折子供の姿に戻ることがあるが(そちらが本来の姿などと言うのだから驚きだ)あんなに愁いを帯びた子どもを見たのは初めてだった。

さて、自分が田舎出身者だということは百も承知しているリンクは目の前で眼を輝かせているトゥーンリンクもどうやら田舎出身だということを知った。ハイラルの城下町にふらりと来たのだが、この反応はどうしたものかとリンクは首をかしげた。

「そんなに珍しいか?」

りんごが。
トゥーンはあまり喋らないが表情の変化が豊かなのでわかりやすかった。こくこく、と頷いた後にリンクを見上げて「こんなにきれいなのははじめて見た」とぼそり呟いた。ふむ、とリンクは瞬きを繰り返した。
確か、と財布をごそごそ漁り、日ごろのルピー稼ぎがともなったのか思ったより懐は寒くなかった。店の主に言ってりんごを3つぶん買った。そのひとつをトゥーンに選ばせると、ひとりでうーと唸りながら、数分後、ようやく決めたりんごに手を伸ばして嬉しそうにリンクを見上げた。

「ありがとう、リンク」
「どういたしまして。リンク」

お互いリンクという名前に初対面のときも、今も、因縁を感じずにいられなかった。
リンクの存在する世界にはゼルダもガノンドロフも存在するから。それでも同じであろうとも与えてもらった名前を愛称や他の名前に言い換えることはしない。生きていることを、否定しているような気分になったからだ。
トゥーンがもうひとつは、と不思議そうに猫目を瞬かせながらリンクに聞いてきた。ああ、とため息のような返事をしたあと、トゥーンの手を引きながら、墓参りかな、と呟く。
二人そろって歩くとまるで兄弟のようだ、と王室育ちの人たちに言われたが、一番最初のリンクは、似てない、とひっそり笑った。あれは嫌味だったのだろう。いろんな意味があるとは思ったが、考えるのは面倒だった。
ふと、握っていた手に力が込められてリンクはトゥーンを見た。しゃりしゃりとそのままりんごを齧る姿はやはり自分と同じ田舎育ちだと思い、親近感で溢れた。田舎というより島国だそうだけれど。
この小さな手も自分のようにたくさんのものをなくしては、たったひとつのことのために駆けて来たのだと思うと何故か泣きたくなった。

「きっと喜ぶよ。だってこれおいしい」

きらきら笑う顔があんまりにも子供らしくってリンクは微笑んだ。そうだといいな、と返すとトゥーンはまた美味しそうにりんごをしゃりしゃりと食べ始めた。
途端に満足そうに細められる猫目に、リンクは本当に猫みたいだな、と苦笑いを残した。




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