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燃える髪に顔を埋め

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私は一人、遠い遠い森の中を行くことになった。

晴天の霹靂。

沢山の仲間がいるボックスの中、同質だった私たちは、いつも同じように笑って、怒って、泣いて、ゆったりと流れる日々を過ごしていたのだ。

でも私だけが、ある日皆と別れて、帰ることも叶わない違う色の空を見上げることになった。

寂しくて寂しくて、涙が土を潤し、青く茂る草木を育てる頃には、私は「リーフィア」になっていた。

私はもう同質ではない。

誰かとは違う「私」が池に写るたび、どこにも溶け込めないその姿に怯えた。

私は誰かになりたかった。

自分独りだけでは、脚の先から粒子になって、薄暗い森の空気に溶けてしまいそうだった。



久しぶりに元いた町に帰ってこられることになった。

元いた町、といっても、マスターはとっくに拠点を他の街に移してしまっていたし、昔馴染んだボックスにも仲間はほとんど残っていないだろう。

私は「選ばれた」個体なのだ、とマスターは言った。

育った環境によって違う特性を持つ「イーブイ」の中で、私は特に草に親和性があったのだそうだ。

マスターは沢山いた私たちを厳選して、7種類の属性を持つ仲間を生み出したらしい。

森から連れ出された私は、どこか甘い香りの残る、懐かしいボックスに戻された。

そこにいたのは、アーモンド型の瞳を伏せた、君だった。

作品名:燃える髪に顔を埋め 作家名:幾田宴