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コンビニ店員の俺と本田さんと各国の人々。1~21まとめ

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くまとうさぎとハンバーガー。






「いらっしゃいませ」

来店を知らせるチャイムに発注書から顔を上げれば、なんともまあ珍しい取り合わせで。いかつい威圧感剥き出しのバリゲルマンなムキムキさんと残念なイケメンのうさぎさんと、彼が来ると棚から全てのハンバーガー類が消えるアメリカンなハンバーガー君な不思議な面子だ。

 早速、ハンバーガーの置いてある棚に嬉々として向かうハンバーガー君にムキムキさんは溜息混じりに眉を寄せた。
「アルフレッド、夜にそんなものを食うな」
「いいじゃないか。ここのハンバーガー、意外に美味しいんだぞ!ルイス」
「ルイスじゃない。ルートヴィッヒだ。何度言えば解るんだ」
「君の名前、長くて舌噛んじゃうよ」
「噛め。噛み千切れ。静かになって結構じゃないか」
「酷いんだぞー!!」
ムキムキさん、口端を少し上げて笑った顔が…すごく、ドSです。いつもは陽気なイタリア君と本田さんと来店されることが多いので、そのときはまた違った顔をしているけど。ムキムキさんとハンバーガー君は歳は離れてる風に見えるけど、お互いに遠慮がない感じがするな。しかし、共通項が見当たらない。一体、どういう関係なんだろう?

「おお、新作スイーツじゃん。…なあ、これ、お前食った?」

俺が眉をを寄せるとうさぎさんが話しかけてきた。最近のうさぎさんは俺にスイーツの感想を聞いてくるので、新作はすかさず試食するようになってしまった。お陰で、体重少し増えた。…これはヤバい。
「お客様はきなこは大丈夫ですか?」
外国人は豆を甘く煮た餡子が信じられないものらしい。向こうで大豆類はほぼ家畜の飼料とかそんな感じらしくて、豆ってだけでアウトな人も多い。絶対、人生損してるよな。あんな、美味いもん世の中にねぇってのに。
「大丈夫。菊んとこでアベカワモチとか食ったんだぜ。最初、粉っぽいし、口ん中がモソモソするんだけどよ、砂糖の甘さときなこの香ばしさがいい感じに口ん中で混ざるんだよな。モチの食感も面白ぇよな!」
安倍川餅を語れる外人がいるとは思わなかったぜ。俺はカウンターを出ると先日、出たばかりのふりかけスイーツを手に取った。
「きなこをふりかけて食べるロールケーキとかどうですか?試食しましたけど、中々視点が斬新できなこの香ばしさが失われずに味わえ、黒蜜の甘さも堪能できる和洋兼ねた味で、緑茶にもコーヒーにも合いますよ」
「…おぉ!面白ぇ!…前から、思ってんだけどよ、日本のこういうとこスゲーよな。菊がマカイゾウとか言ってたけどよ。自分とこの独自の食材を組み合わせて新しいもの作るの上手いよな。しかも、美味いし。感心するぜ」
「ありがとうございます」
褒められたのは俺ではないがそう言ってもらえるのは何か嬉しい。…しかし、魔改造って言うなー。確かに魔改造上手いような…?…国民性なのかね?
「菊にも買っててやろ。アイツ、こういうの好きそうだし。帰ったら、茶でも入れてもらうか」
うさぎさんはニコニコとカゴにきなこと黒蜜のロールケーキを二つ入れた。…お買い上げ、誠に有難うございます。

「兄さん、何、買ったんだ?」

うさぎのアップリケの付いたエコバックにロールケーキを入れ、、それをニコニコと覗き込むうさぎさんの背後にムキムキさんが立つ。…って、今、何て、言った?ムキムキさん、うさぎさんを「兄さん」って、言ったよね?兄弟なの?え、マジですか?…ってか、うさぎさん、このムキムキさん(俺想像25歳)より、年上なの?
「きなこと黒蜜のロールケーキ。こいつのおすすめ。前に進めてくれたいちごのもすげー美味かった!」
「そう言えば前に美味しかったと言ってたな。それはまだあるのか?」
ちょっと混乱しているムキムキさんが俺に聞いてくる。
「期間限定商品でしたので、今は販売しておりません」
混乱しつつも腐ってもコンビニ店員だ。すらすらと言葉が出てくる。
「…そうなのか。残念だ。じゃあ、今日、兄さんが買ったのと同じものを俺も買ってみようか」
ムキムキさんはちょっと残念そうな顔でそう言った。あのあまおうのロールケーキ、本当に美味しかったよ。
「俺の半分、食わせてやるからさ、チョコレートのヤツ買えよ。半分こしようぜ!そうしろ、そうすべきだろ!」
スイーツコーナーに向かったムキムキさんの後を追いかけ、うさぎさんが力説する。それにムキムキさんは折れたのか、チョコロールをカゴに入れて、レジへとやって来た。

「ルイス、何、買ったんだい?」

案の定、棚に並んでいた俺が先並べたばかりのハンバーガーをごっそりとコカコーラ1.5リットルペットをカゴに入れて、ハンバーガー君がレジにやって来た。
「…ルイスって呼ぶな。お前のこともアルフレートと呼ぶぞ」
「やめてくれよ!俺じゃないみたいなんだぞ!!…ん?なんだい、それ、美味しそうなんだぞ!」
「ロールケーキだ」
「俺も食べたいんだぞ!どこにあるんだい?」
「そこの棚だ」
ムキムキさんが指し示した棚を見て「ワオ!」と大きな声を上げ、あれやこれやと物色し始めたハンバーガー君のカゴが見る見る間に隙間なく埋まっていく。
「…お前、そんなに食えるのか?」
そのカゴを見たうさぎさんが眉を寄せた。
「食べれるんだぞ!」
自慢げにハンバーガー君が言う。ムキムキさんが呆れたように溜息を吐いた。
「アーサーにまた、メタボと言われても俺は知らんぞ」
「メタボじゃないんだぞ!!」
言い張るハンバーガー君のお腹を徐にうさぎさんがむにっと摘んだ。それにハンバーガー君は「ひゃあ!」と声を上げた。

「…お前、コレ、ヤベぇだろ。ぷにぷにじゃねぇかよ!!」

摘むというより揉み始めたうさぎさんの顔は超真顔。それにハンバーガー君がムキーと顔を赤くした。
「やめてくれよ!」
「いやー、でも、このぷにぷに、何かクセになるな。帰ったら揉ませろ!」
手を払われたうさぎさんがハンバーガー君のぷにぷにが何やらツボにハマったらしく、手をわきわきさせながら言う。それに顔色を変え、ハンバーガー君はムキムキさんの背後にさっと隠れた。
「嫌だよ!ルイス、何とか言ってくれよ!!」
「…嫌なら、ダイエットすればいいだろう。…そう言えば、来週ウチとお前ののところで合同演習の予定が組んであっただろう。参加したらどうだ?いい運動になると思うが」
会計を頼むとムキムキさんがカゴを出してきた。
「嫌だよ!ギルも参加するんだろ?前のとき、死ぬかと思ったんだぞ!!」
相変わらずムキムキさんの後ろに隠れながら、ハンバーガー君が言う。
「ケセセ!アレぐらいで根を上げてんなよ!!今回もビシバシ行くぜ!!」
ハンバーガー君がぎゃあぎゃあ五月蝿い。…一体、この人たちの職業はなんだろうと思うがさっぱり俺には検討もつかない。
「…お会計、1780円になります。スプーンはお付けしますか?」
「いや、いい。袋はこれに頼む」
ムキムキさんはしろくまのアップリケの袋を出してきた。…兄弟だよ。兄弟だ。アップリケ違いのおそろかよ!!…心の中で叫びつつ、まさかと思っていると、ムキムキさんはリラックマのがまぶち財布を出してきた。…ムキムキ相手にギャップ萌死にしそうになる日が来るなんて思わなかったぜ…。