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くまちゃん
くまちゃん
novelistID. 16246
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【時京・現パロ】cherry blossom

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cherry blossom




入浴剤が不透明な色でよかった、と時雨は独りごちる。
向い合って湯船で寛ぐ京一郎は何のことかと不思議そうにこちらを見上げた。

「別に何でもねえよ」

時雨は京一郎の頭についた入浴剤の泡をそっと振り払いながら苦笑した。

「この入浴剤すごくいい匂いだね、やっぱりこっちを買って正解だったよ」

湯船のお湯と泡をかき回しながら京一郎は微笑む。
肌の白い京一郎はしばらく風呂に浸かるとすぐに頬や肩がほんのり桜色になった。
時雨はその変化を眺めるのが好きだったが当の本人は気づいていないだろう。

「時雨?」

ふと無口になったのを訝しく思った京一郎が心配げに見つめてくる。
火照った頬にわずかに寄せられた眉、湯の熱気のせいだろうか瞳はとろんと潤んでいる。
長いまつげが数度瞬いて、時雨はぐっと口付けたい衝動を抑える。
ごまかすように、京一郎の頬をつねった。

「いたっ!時雨!痛いってば!」
「ぼけーっとしてるからだ。隙だらけだぞ」

笑いながらぷにぷにと頬をつっつくと、リスのように頬を膨らませて怒る京一郎が可愛くて仕方がない。
京一郎が怒るのも笑うのも、その一つ一つが時雨の心を乱す。恋は病と言うが時雨は身を持ってそのことを実感していた。

「…隙あり!」

次の瞬間、ばしゃん、と湯船のお湯と泡が飛んで時雨が反応するよりも早く京一郎は時雨の脇をくすぐる。

「…ちょっ…!やめ…はははっ…きょうちろ…っ、ちょっと、っや、やめ…」
「さっきのお返しだ!」

京一郎はにやりと笑い、身を捩って逃げる時雨の体のあちこちにくすぐった。
時雨の笑い声が響く浴室の中、攻防は続き時雨はたまらず京一郎の腕を掴んで抱き寄せた。
そんなことをしているうちに浴室のタイルや蛇口まで泡だらけになってしまい、時雨は渋面になる。

「あーあ…こりゃ臣にどやされるぞ…」

ふぅ、と溜息をついて胸元に抱かれた顔を見やると、時雨の慌てる様子がおかしかったのか京一郎は小さく肩を震わせて笑っていた。

「ふふっ、時雨の、あの顔…」
「…お前なぁ…」

時雨は苦笑しながら京一郎の両腕からゆっくり手を離し開放した。
湯船を動きまわったせいで浴室はいっそう入浴剤の桜の甘い香りが立ち込めていた。
しばしの沈黙の後、二人の距離が近いのにやっと気づいたのか、京一郎はぎくしゃくと顔を背けた。横顔を見やるとさっきよりも頬も赤い。
桜色に染まる首筋に誘われるように手を伸ばしそっと触れると、びくりと体を強ばらせて困ったような表情で時雨を見上げる。

(その上目遣いとか結構くるんだけどなぁ…)

時雨はたまらず京一郎の瞳から目を逸らす。京一郎本人には何の自覚もないので余計たちが悪い。
嫌がる様子がないので、首筋からゆっくりと頬に触れる。親指で唇をなぞると京一郎はくすぐったげに小さく身を捩った。

「…し、しぐれ…?」
「お前の顔、湯船と同じ色だ」
「…お風呂に浸かってたら顔ぐらい赤くなるよ…」

照れた様子で目線を逸らす京一郎が愛しくて、たまらず頬に口付けた。

「…んっ、ちょ…時雨…」
「ん?」

制止する京一郎の声を聞き流しながら、額や首筋に繰り返し口付ける。

「…や、ちょっと…し、しぐれ…ってば…」
「暴れたらまた泡があちこち飛ぶぞ」
「……んっ…そんな、の時雨の…」

時雨に再度腕を掴まれてぱしゃっと湯船のお湯が弾けて飛んだ。

「俺の?」

意地悪い顔で京一郎の顔を覗きこむ。
真っ赤な顔をして涙目で睨みつけているが、それさえ時雨の劣情を煽る。

「もうっ…やだってば…」
「なんで?嫌か?」
「……嫌じゃない、けど…」
「じゃあ、いいだろ。いつもしてる」
「そうじゃなくって……」

しどろもどろに受け答えする京一郎は時雨に告げるのを逡巡しているようだったが観念してぽつりと呟く。

「…だって、風呂場だし…ここでキスしたらなんだか変な気分になる…」

京一郎は照れくさそうに俯いた。
時雨はたまらず京一郎を抱き寄せ、頬に触れる。顔を覗きこむと口では嫌がっていたが、瞳は素直に京一郎の感情を表していた。
京一郎の物欲しそうな眼差しに、それまでぎりぎりで保っていた理性が静かに飛ぶのを時雨は感じていた。
ぐい、と少し強引に引きよせ、唇に口付けた。最初は軽く触れ、二度目に触れたときは深く口付ける
歯列を割り、舌を差し入れると最初はおずおずとした動きだったのがだんだん時雨の動きに合わせて拙く舌を絡めてきた。

「んっ…ん…は…」

唇が離れる度に京一郎が苦しげに喘ぐその声が時雨はたまならく愛おしく思う。

「…ん…変な気分って…どんな?」

いっそう強く抱きすくめ、うなじや鎖骨など京一郎の感じる場所を愛撫しながら口付けの合間に問いただした。
京一郎は真っ赤な顔で小さく抵抗する。湯船で動く度にぱしゃぱしゃとしぶきが上がった。

「も…やだ…時雨…んっ…」
「やだ、じゃないだろ?」
「んん…っ」

繰り返される口付けと愛撫に降参したかのように京一郎はくたりと時雨に体を預けた。

「はは、のぼせたか?」
「……誰のせいだと思ってるんだよ…」

はぁ、と小さく息を吐いて京一郎は時雨の肩口に頭を乗せる。
湯船の熱気と口付けのせいでのぼせてしまったようでくらくらする。

「大丈夫か?そろそろ出るか。俺ものぼせそうだ」
「…あ、時雨……」
「ん?」

名前を呼ばれて顔を覗きこんだ瞬間、ちゅっと軽く口付けられた。
驚いた時雨の顔を見て京一郎はしてやったりの表情で微笑んだ。

「…さっきの仕返しだよ」


※付き合ってません