二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

金色の双璧 【単発モノ その2】

INDEX|10ページ/14ページ|

次のページ前のページ
 

2.
「ほう、そんな夢を」
「ああ、懐かしいなって思って。たぶん、寝る前にミロの話しをたから誘発されたのかもな」
 なんだかんだとアイオロスを言い包め……たのはシャカだったけれど、未練たっぷりなアイオロスをようやく神聖なる寝室から追い出すことに成功したあと、もっそり起き出したシャカがシュルシュルと耳触りの良い音を伴いながら衣装を身に纏う姿を鼻の下を伸ばしながら眺めていた。
「アイオリア、その手を離したまえ」
「へへ」
 衣の端を握り締めていると案の定、一喝される。怒られるとわかっていても、つい手を出してしまうのは我ながら悪癖だとアイオリアは思った。
 握る手の力を緩めるとするりと抜けてシャカの元へと向かった衣は綺麗に折り畳まれて一つの装飾品のように衣装を纏め上げた。いつもながらの手品のような動きに惚れ惚れする。
 最初はどこをどう引っ張れば脱がせられるかなんてわからなかったけれども、今では手慣れたもので、アイオリアも脱がすことに関してだけは随分と手際が良くなったと自己満足に浸っていると爛れた思考でも読み取ったのかシャカの一喝がまたも降ってきた。
「―――とりあえず、行ってくる。それで君は今日、どうするのかね」
「そうだな、あとで闘技場でも覗きに行こうかと思っているけど。手伝いが終わったら呼んでくれ」
「わかった。だが、きっと遅くなると思う。日が沈んでも戻れないかもしれぬ」
「なら、適当に切り上げて小屋の方にでも行って片付けでもしておくさ」
「承知した」
 そう告げてシャカは扉から出て行った。今日はシオン教皇の秘書、もといサガの手伝いにシャカは行ったのだった。相変わらずシャカはサガっ子だよなぁと思うこともあったけれども、サガに黒くなられても面倒なので積極的に送り出しているアイオリアである。
「さて、と……」
 着替えて闘技場にでも行こうか、とも思ったけれども、なんとなくアイオリアは草臥れた愛着ある小屋の方へと向かいたくなってベッドから抜け出した。
 アイオリアは基本的には獅子宮をねぐらと定めてはいたけれども、時々は吹けば飛びそうなほどに古くなった小屋にも足を運んでいた。小屋を訪れるたびにシャカは呆れたような顔をするけれども、咎めたりはしなかった。
 つらい記憶も多いはずの住処とした小屋。それでも、いい思い出もたくさんあって、愛着があった。多分にシャカと関係していることを当のシャカは知らないはずだ。
 立てつけの悪くなった扉を上手く開けるにはちょっとしたコツが必要で、くいっと押し上げるようにして開いたあと、アイオリアは締め切った窓を一つずつ開いていった。いつものように箒で手早く掃除したあと、雑巾がけをする。 一通りのことを終わらせた後、寝室のベッドに腰掛けた。
「………」
 よれたシーツに手を翳し、皺を伸ばす。とくんとくんと心地よいリズムで鼓動を感じながら瞳を閉じた。今でもまざまざと思い出す、あの出来事。シャカへの淡い気持ちがしっかりと形作られることとなったきっかけ。
 きっと生涯忘れ得ぬ記憶の一つだと言えば、それこそシャカに怒られるだろうなとアイオリアは笑みながら、眠る過去に寄り添った。


Fin.