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ローリーズガール

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おんなは少しばかで弱さをみせてかわいいふりをしていた方が得らしい。たとえばわかっているくせに、わからない振りをするとか、それは数学の問題であったり、一般常識であったり様々な場面で応用できることなのだけど、とりあえずすっとぼけておけばオールオッケーだというのでわたしはまた胃のあたりがむかむかっとするのだ。
荷物が重くて持てないのとか、そんなかわいいことだって、言えるもんなら言ってみたい。
・・・いやだけどそんなことを言う自分が客観的に見てたいへん気持ち悪いのでやっぱり無理だ。とにかくわたしはこの世におぎゃあと生まれてから17年間、このような一般的な女子から少し遠いところに位置していた。はじまりはみんなと同じでか細かったというのに。それもこれも全部女癖の悪い男友達の所為だとおもう。

わたしにとって最も近い位置にいる男の子は、生まれてから物心ついたころにはすでにそばにいて、それは幼少期独特の、妙にませている女心からうまれた感情かもしれないけれど、それなりに彼のことが好きだった。幼い世界だから彼しか男の子を知らなかったというのも、ひとつの原因だとおもうけれど、それでもやっぱりわたしだけのあたるくんでいてほしかった。

ところがどうだ。彼は稀代の、うまれながらのプレイボーイであったのだ。わたしとおままごとをしていても、すぐにきれいな、おとなの女性に目を向けたりするから、わたしはどうにかこっちを向いてほしくて、方法が思いつかなくて、つい手をだしてしまう。
はじめはビンタだった。それからお人形を投げた。どうして目の前にわたしがいるのにこっちを見てくれないんだろう?

それでもやっぱりあたるくんの女癖の悪さは細胞レベルのものだったので、小学校、中学校とそれは穏やかになるどころかどんどん悪化していったので、わたしはさらにやきもきするのだ。小学校高学年になるとなんと机を投げられるようにすらなっていた。それについて怪力女の異名がついてわたしは数日泣き暮らすことになったのだけど、だけどそれでもそのとき味方でいてくれたのはあたるくんだったので、余計につらいやら、嬉しいやら。

おれはしのぶがどんなになったって、すきだよ!

あのへらへらした顔をきっとひきしめて言うので、そりゃあ12歳の女の子のわたしはどきどきだってするし、純情な部分もあったのであっさり信じたりもするのだ。(だけど、あたるくんは女の子に嘘は言わないのでたぶん、本心だったんだろうとおもう)

高校に入学すればもはや怪力はわたしのアイデンティティにすらなっていたし。16歳の人間というのはそれなりに大人でもあるので、誰も冷やかしたりはしなかった。だけどもちろん、自然に距離はとられていたけれど。
それでも彼は変わらずにそばにいたし、そしてそれは、幼少期よりはすこし、かたちをかえたものでもあったので、それでいいとおもっていた。過半数の誰かがわたしをこわがっていたって、それでもあたるくんが、彼にとっての一番としてわたしをそばにおいてくれて、そばにいるなら、いいと思っていた。思っていたのに。



いま、彼の一番近くにいる女の子は、もはやわたしではなくって、他の子で、ましてや地球人でもない女の子で、でも世間一般のかわいい子よりはすこしずれている子で、わたしはくやしくなるのだ。だって、確かに顔はかわいいけど、彼女は決して馬鹿ではなかったし人並み外れた電撃という強さをもっていたし、なにより素直なのだ。そんなの、到底かなわないじゃない。

わたしはもう今はあたるくんのことが恋愛感情として好きなのかは、正直よくわからないのだけど、それでもやっぱり時々さみしくなる。だってラムがしていること、お弁当をつくったり、セーター編んだり、愛情の表現をしたり、ということを、ほんとうはもっとわたしがしたかったからだ。
わたしはどうしても、かわいくなりきれない女なのだ。

彼女がやってきた当初は、そりゃあもう、たいへんだったけれどそれでも今は大分穏やかだ。それはあたるくんときちんと線引きをしたおかげでもある。わたしはたちは、また2人のかたちを変えた。戻したというのが正しいのかもしれない。友達という、線引き。だから今は彼にわたしだけを見てほしいだなんて、望んではいないけれど、それでも、やっぱりなあ。17年間、当たり前に横にあったものがぽっかりいなくなるのは、どうしても慣れない。あたるくんはもうわたしのものにはできないし、いや、最初からわたしのものではなかったかもしれないけれど、とにかく、彼を引っ張ることはもうできないので、わたしは新しく穏やかな場所を求めずにはいられない。だって2人をみていると、どれだけ喧嘩したって、結局しあわせそうなのだから、そんなの、不公平だもん。ちょっとくらい自分の幸せも願ったっていいでしょう?

わたしはこの世界で最も悪運がつよく、女癖の悪い幼馴染の所為でこういうふうに育ってしまったので、なかなか世間一般に認められることはできないのだけど、宇宙はたいへんにひろいので、もしかしてこんなわたしでも或いは、あたるくんの他に受け入れてくれるひとがいるのかもしれない。だってあたるくんは、宇宙人に求愛されてるのだから。

わたしはできれば、人間がいいけれど、それでもわたしがどんなになったって、好きだよって、言ってくれるひとがいるならば、それはどんなかたちであれ、嬉しいなあとおもうのだ。
地球人なのか宇宙人なのか未来人なのか、それはまったくわからないけれど、それでも穏やかな居心地のいい場所ならば、そこにいたいなあって、おもうので、心のなかでこっそり、いまだけは女の子らしく、運命の人ってやつを、望んでみたりするのだ。

作品名:ローリーズガール 作家名:萩子