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おにごっこ

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「じゅー」
「え、あの、臨也さ、ん?」
「きゅー」
「え?」
「はーち。ほらほら早く逃げないと捕まえちゃうよ?」

まぁ捕まえるけどね、と笑う臨也さんの笑顔にこの人は本気だ、と悟って僕は慌てて臨也さんに背を向けて走った。

「なーなっ。アハハハハハハ!!!」







「あぁ、帝人くん久しぶり。突然だけど鬼ごっこしようか」
「え?」

一人池袋の雑踏を歩いていたときにいきなり声をかけられて振り向く。
そこには笑顔の臨也さんが右手を振って立っていた。
不思議と池袋で会うなぁ、なんて思いながら頭を下げて臨也さんに近付く。
臨也さんはまた

「鬼ごっこしようか、帝人くん」

と言って笑う。鬼ごっこ? 何いきなり。

「話は簡単だ。君が逃げて俺が捕まえる。ただそれだけだよ」
「はぁ」
「逃げた君が逃げ切れたら俺が一つ言うことを聞こう。逃げた君を捕まえたら君は俺の言うことを聞く。簡単だろ? 大丈夫、無茶な要求はしない」

お金が欲しいっていったらあげるよ、なんて笑えないことを言ってきた(そりゃお金はないからほしいけどそんな要求出来るはずない!)別に今から何かあるわけでもないし、構わないけど欲しいものはないしむしろそんなことで何かもらえるなんて気が引ける!

「あの、臨也さ」
「あぁ、やらない、なんて選択肢はないよ。君が俺と話した時点でこのゲームは始まった」
「えっ?」
「ちなみに俺が勝ったら帝人くんの恋人の座をもらうよ、シズちゃんから」

シズちゃん。
臨也さんの言葉でさぁと血の気が引く音がした気がした。
何で知ってるんだ。昨日僕と静雄さんが付き合うようになったことを!
焦る僕を尻目に臨也さんは無情なカウントダウンを始める。それはもう楽しそうに。
僕は慌てて駆け出した。怖い、と思った。
そしたら臨也さんも走り出した。
ちょっ、ゼロになって追いかけてくるって意味じゃなかったの!?
どうやらゼロになるまでに僕を捕まえる、ってことらしい。
時間無制限の鬼ごっこよりは遥かに逃げれそうなのに恐怖は続く。
まるですぐ後ろにいるのかと思うくらいに臨也さんの声がクリアに耳に飛び込んできた。

「俺はね、帝人くん。許せないんだ。君を先に知ったのは俺。君と先に話したのも俺。ぜーんぶ俺。なのになんでシズちゃんなのかなぁ!」

ごー!
楽しそうな声が響く。でも怖い、あぁ確実に彼はキレている!

「よーん!」

普段走らないから息切れしているのに臨也さんは喋りながらも足は緩まない。差は詰まる。
人の流れを掻い潜って走るのは難しいからすぐ側に路地を見つけて僕は駆け込む。
それが臨也さんの狙い通りの行動をしていただなんて考えもしていなかった。

「う、そ」

入った路地は一方通行の行き止まりで、後ろからは、にー! とカウントする臨也さんが。
振り替えれば至近距離で笑う臨也さん。
後退ればドンと背中に壁があたった。

「いーち」

臨也さんの手が僕に伸びる。
僕の背は壁、逃げられるはずがない。
あぁ僕は捕えられた。

「ゼー」
「ロ……そこまで」

臨也さんの手が僕に届くまでに別の声が入ってきた。横から手が伸びて臨也さんの手を掴んでる。
え、と思って横を見ればそこには

「こんばんは、帝人くん。……お久し振りです、折原臨也さん」
「え、か、幽さん!?」

静雄さんの弟、幽さんが!
ビックリして見てたら少し驚いた顔をしていた臨也さんは笑って久しぶりだね、幽くん。って言っていた。
幽さんはなにも言わずに頭を下げて臨也さんの手を離す。
そして僕の腕を掴んで引き寄せてきた。

「帝人くんは……兄貴だから」
「え!」

ちょ、なんで幽さんまで知って。
慌てて幽さんを見れば、幽さんは男の僕でも見惚れる綺麗な笑みで微笑んで、僕の頭を撫でた。
大丈夫、って。
そうしたら臨也さんは声をあげて笑いだした。

「不毛だね!」
「別に」
「ふぅん、まぁいいや。鬼ごっこ飽きたからもういいよ帝人くん」
「え」
「また今度遊ぼうね」

今度は誰も邪魔されないようにするから。
そう言って臨也さんは僕たちの前から消えた。
残ったのは僕と幽さん。
怖かった? と聞く幽さんに僕は正直にはい、と返した。
臨也さんに捕まったらなんだか静雄さんにもう会えない気がしてならなかった。
そう思った瞬間、背筋がぞっと冷たくなったけど、幽さんが僕を優しく抱き締めて背中をポンポンとあやすように叩いてくれたから僕は少し気が楽になった。

「幽さんは何故ここに? あ、それより、ありがとうございました」
「撮影終わったから、兄貴に会おうかと。そしたら帝人くん見つけたから」

ほら。そう言って幽さんが僕の手をとる。ビックリしたけど、そのまま歩いた。
やっぱり兄弟なんだなぁ、凄く優しくて安心する。
無性に静雄さんに会いたくなった。

「…………なにしてんだお前ら」

と思いながら路地を出たらそこに静雄さんがいた。横にはトムさんもいる。
あ、と思ったけど静雄さんは一点を見てなんだか怒ってる。
ん? と視線を辿れば…………あ、僕たち手を繋いでるんだった。
幽さん、と名前を呼ぶより先に幽さんは繋いだ手を上げて、役得。と言った。
はぁ? と言う静雄さんの声が怒ってる。ど、どうしよう。と思ったら幽さんが僕を見て笑った。
ほら、と手を離して僕を押す。
軽くつんのめりながら僕は静雄さんの前に立った。

「静雄さん、好きです」
「は!?」
「言いたかったんです、どうしても」

静雄さんは嬉しいことに顔を赤くして僕から視線を外して、あーって声を出す。
軽く頭を掻いて。後ろで幽さんが笑っているような気がした。

「俺も、好きだ」
「ありがとうございます」
「あー! トムさん!」
「はいはい、上がれ上がれ」
「竜ヶ峰、行くぞ」
「わぁっ! ちょ、静雄さん、恥ずかしいから下ろしてください!」
「あー無理だな」

覚悟しろ、とにぃと笑う静雄さんに、僕は笑う。
静雄さんが好きだ。
作品名:おにごっこ 作家名:秋海