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理由

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何故 どうして。そんなの初めから決まっていた。





【理由】



「潤」

その名前を知った時、まるで祖国―と言っても異国の地での俺の過去の地位はスラムのゴミであるが―の聖母のようだと思った。
『しおみ じゅん』
何度この日本語の名前だけを覚える為に復唱したか数え切れない。
聞き慣れないのは国境にあるけれど それよりも。

「・・・・・」

意中の想い人である年上の―少女のような容姿をした―彼女は、また研究室の床上で寝扱けていた。
油断した、だらしない寝顔まで愛らしく愛しく思えてくるのは俺の恋心の病は相当重症である証だ。

普段の潤のライフスタイルは、スパイスの女王・汐見教授として年中毎日スパイスの研究で徹夜など不規則な生活が常套である。
であるから彼女の深い眠りにはそう言った生活の皺寄せみたいなもの。
俺がゼミの部屋や彼女の研究室で声を掛けて入室しても、いつも潤は集中力が半端で無く俺の存在に気付かない事が殆ど。
万分の一の確立で彼女の集中力が切れて偶に気付いてくれても『いつもの教師が一生徒に向ける笑顔』を振り撒くだけだ。

ムカつく。

「おーい。風邪引くぞ…ってこんなに散らしやがって」

女であるなら、増してや童顔で若く見られると言う有る意味利点を持つ三十路を超えた潤であるなら、
もっと女らしい服装とかそういう類のものを所持していれば、もっと彼女の魅力は増すしそれに気付く男も俺だけではない筈だ。
なのに潤ときたら要はスパイスの研究に没頭もいいところ没頭しすぎていて。
服もダサいシャツや芋ジャージとかが常日頃多いし、
周りに有るのは大好きなスパイス―よく苗を枯らすが―と学術書に囲まれている。
何より人生をスパイスに捧げたような塊の象徴が地味なポニーテールと眼鏡。

そんな潤に、俺は毒を吐きつつも正直ホッとしている。
一回り俺より長く生きた彼女の親近者に悪いゴミ蟲が居ないこと。これに尽きる。
そして何よりも大事なのはそんな潤だから俺は母国で異国の地に生まれた彼女に出逢えたのだ。

スパイスが俺らを出逢わせた・・・なんて――――

「くだらねぇ」

俺は勢い良く彼女に毛布を掛けて横抱きに抱えた。

「ん…」
潤が俺の腕の中で人肌がくすぐったいのか身を捩る。

可愛い 可愛い 可愛い、俺だけの潤。

彼女の艶やかな桃色の唇に吸い込まれるように俺は彼女にキスをした。
何とも言えない甘い香りが途端に鼻腔を擽る。潤は香水を付けて居ないから潤の体臭に寄るものだ。
元来産まれ付き鼻が利く俺は色情に溺れた金持ちの女共の臭い香水は幼い頃から大嫌いだった。

「・・・・・」

だから このまま 彼女を食べてしまっても良いのだろうか?

何故 どうして。そんなの初めから決まっていた。






≪続≫
作品名:理由 作家名:珠真