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凛誕!

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仕返し(遙凛)



二月に入ってすぐの日曜日、凛は遙の家を訪れていた。
今日は凛の誕生日だ。
遙の家に集まって祝いたいから来てほしいと頼まれたのである。
最初は凛はなんだか気恥ずかしく感じて断ったのだが、真琴が、みんなで集まってわいわい楽しみたいんだ、凛だけ違う学校だから会う機会も少ないし、と言ったので、応じることにした。
玄関の呼び鈴を押すと、しばらくして戸が開いた。
敷居の向こうに立っているのは遙だ。
凛は家の中に入った。
少し違和感を覚えた。
その理由を考えないまま、廊下を進んでいく。
居間に足を踏み入れた。
違和感の正体がわかった。
みんなが集まっているはずなのに、遙以外だれもいない。
だから、静かで、違和感を覚えたのだ。
「他のヤツは?」
買い物にでも行っているのだろうかと思いながら、凛はたずねた。
遙が身体ごと凛のほうを向いた。
その手が伸ばされる。
え、と凛は戸惑った。
次の瞬間、身体を押された。
背中に痛みを感じた。うしろで障子が鳴った。
障子に押しつけられたのだ。
「なっ、なんだ……!?」
驚いて、凛は遙を見る。
遙は凛を抑えつけている。
その顔にあるのは、いつもの無表情だ。
口が開かれる。
「仕返しだ」
落ち着いた声が告げた。
「はぁ!?」
「おまえ、俺を金網に押しつけただろう」
そう言われて、凛は思いだした。
県大会のまえ、スポーツ用品店に行ったとき、凛は遙と偶然会った。
あのとき、凛は遙を金網に押しつけたのだった。
おまえはおれのために泳ぐんだ、と言って。
「たしかにそうだが……」
その仕返し、というのは、わからなくもないが、なぜ、今になって?
困惑する凛の顔を、遙はじっと見ている。
「ちなみに、他の者たちが来るのは一時間後だ。準備したいからと言って、当初の予定より一時間遅らせてもらった。その予定変更は俺からおまえに知らせると言って、知らせなかった」
「なんで」
「だから、言っただろう。仕返しだと」
遙は相変わらずの無表情だ。
戸惑いよりも、息苦しさを感じるようになってきた。
「顔、近すぎだろ!」
凛は怒鳴った。
この状況がやけに息苦しくて、文句を言わずにはいられなかった。
だが、遙は動じない。
「あのときも、このぐらいの距離だったはずだ」
冷静な声で指摘してきた。
そう言われてみれば、あのときも、このぐらいの近さだった気がする。
しかし、あのとき、凛は感情にまかせて動いていて、そんなときのことを言われても困る。
遙の瞳は凛をとらえている。
「おまえは勝手だ」
近くから、遙は言う。
「ひとの心をかき乱して」
その声音はいつもよりも強い。
「そのあと、去っていったりする」
さらに、顔を近づけてくる。
息苦しさが増す。
「絶対、あのときよりも近い!」
この状況を変えたくて、凛は非難するように言葉を投げつけた。
けれども、遙は表情を変えなかった。
そして。
「だから?」
そう問いかけてきた。
「だから、って……」
むしろ凛のほうが戸惑ってしまった。
顔が近すぎる。だから、どうした。
でも。
息苦しい。
心臓がやけに速く強く打っている。
つまり、ドキドキしている。
遙の顔が近くにあるからって、ドキドキしているなんて、絶対におかしい……!
凛は自分の頭が熱くなってきているのを感じる。
困った。
どうしたらいいのか。
遙がまた顔を近づけてきた。
止めるべきだ。
だが、止めるって、なにを?
そう凛が思ったとき。
「ハルー」
聞き覚えのある優しい声が外から聞こえてきた。
「準備手伝うよ」
真琴だ。
凛はほっとした。
少しして、遙は身を退き、凛のそばから離れ、さらに居間から出ていった。
廊下を歩く足音が聞こえてくる。玄関のほうへ向かっているのだろう。
その足音を聞きながら、凛は口を押さえていた。
ついさっき、ほっとした直後、遙は告げた。
「誕生日おめでとう、凛」
たったそれだけ。
なのに、顔が熱い。
こんなの絶対におかしい。
真琴がここにやってくるまでに、きっと赤く染まっている顔をどうにかしなければならない。











作品名:凛誕! 作家名:hujio