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5歳の凛ちゃんがあらわれたら

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五歳の凛があらわれた



岩鳶高校水泳部四人と鮫柄学園水泳部の似鳥が横並びで立っているまえに、凛がいる。
整った顔立ち。
しかし、全体的に小さい。あどけない雰囲気が漂っている。
「えっと、これ、どういう状況……?」
「これはファンタジーだからツッコミ不要なんだよ、まこちゃん!」
「渚君の適応能力の高さにはいつも驚かされます」
「そんなことはどうでもいい」
遙はいつもの無表情でそうキッパリ言うと、凛のほうへと進み出る。
凛はきょとんとした様子だ。
そんな凛を見おろし、遙は問いかける。
「凛、おまえ、いくつだ?」
すると、凛は右の手のひらを立てた状態でまえに出す。
「五歳だ!」
満面の笑みで得意気に答えた。
直後。
「天使……!」
遙のうしろから声があがった。遙の背後にいる者たちは一様にキュンとした表情をしている。みんな、五歳の凛の可愛さに胸を射抜かれたようだ。
ひとりだけ表情を変えなかった遙はふたたび口を開く。
「そうか」
あいかわらずの冷静な声。
「わかった。俺がおまえの面倒を見よう」
遙は腰をかがめて、手を凛のほうへやる。
あたりまえのことのように凛を抱きあげようとした。
そのとき。
「ちょっと待ったぁ!」
動きを止める声が遙に飛んできた。
声の主は似鳥である。
似鳥も凛のほうへと進み出て、遙の隣に立った。
「そういうことを勝手に決めないでください!」
キリッとした顔つきで似鳥は主張する。
「凛先輩は僕が責任を持って面倒を見ます! 僕が凛先輩を紫の上のように立派に育てあげます!」
「紫の上というと、源氏物語だね」
背後で、得意教科が国語の真琴が言う。
「主人公の光源氏が幼い紫の君を見初めて、大切に育てて、紫の上と呼ばれる理想的な女性に成長させるんだよね」
「というと良い話のようですが」
怜がメガネのブリッジを指で押さえる。
「光源氏は自分の初恋の君である藤壺の姪で、藤壺に似ている美少女の若紫に眼をつけ、祖母の死後に父親に引き取られるはずだった若紫を略取し、自宅までつれてきて、もう帰れない状態にして、自分好みに育てて、年頃になると、自分を信じて慕っている若紫に手を出し、それからも様々な女性と関係を持ち、子供も作り、さらには紫の上と同じく藤壺の姪である女三宮を正室として迎え入れたのです」
怜の得意教科は数学と英語だが、趣味が勉強なので、古文にも詳しい。
「うわー、愛ちゃん、凛ちゃんをそんなふうにしたいんだ……」
「違います! 僕が言いたいのは、立派に育てあげる、ということです!」
「俺はひとり暮らしをしているから家事に慣れている」
似鳥と他の者たちのやりとりを無視して、遙は冷静に言う。
「料理も得意だから、凛にうまいものを食わせてやれる」
「ですが、遙先輩は魚料理が好きで、魚料理ばかり作る傾向にありますよね」
そう怜は指摘し、さらに続ける。
「僕は家族と同居していますが、弁当は自分で作っています。凛さんの成長のために、栄養バランスをしっかり考えた料理を作りますよ」
「えっと、俺は……」
「真琴、おまえは蓮と蘭からもう二度と料理はしないでほしいって泣いて頼まれただろう」
「泣いて頼んだって……。一体なにがあったんですか?」
「蓮と蘭は、見た目がひどくて、味もひどい料理を出されたらしい。作った真琴は百パーセント善意だったみたいだが」
「……」
真琴は視線を斜め下に落とした。
渚が声をあげる。
「僕はふだん料理はほとんどしないけど、凛ちゃんのためなら毎日がんばるよ!」
「僕もです! 凛先輩のために、一生懸命、心をこめて作ります!」
似鳥は両方の手を拳に握って、訴えた。
そんな彼らをまえにして、凛は戸惑いの表情になっている。みんなが自分の面倒を見たがっているという状況を、どうしたらいいのかわからないらしい。
「みんな、落ち着いて。凛が困っているよ」
優しい声で真琴が言った。
みんなの視線が真琴に集まる。
真琴はにこっと笑った。
「だれが凛の面倒を見るかは、俺たちのあいだで決めるんじゃなくて、凛本人に選んでもらったらどうかな?」
そう穏やかに提案した。
「そうですね。それが一番いいですね」
「うん、そうだね!」
「凛先輩が選んだことなら、僕は納得します。僕が選ばれたいですけど……!」
「……いいんじゃないか、それで」
真琴の提案は他の者たちから受け入れられた。
ということで、凛のまえで全員がふたたび横並びになり、アピールタイムが始まった。
「凛ちゃん、僕と一緒にいたら楽しいよ!」
「凛さん、僕はあなたのより良い成長を考え、学び、行動することを約束します」
「凛先輩、先輩への愛はだれにも負けません! 一生大切にします!」
遙は手のひらを上にして、それを凛のほうへ差しだす。
「凛、来い!」
その背景では桜の花びらが舞い散っている。
だが、彼らから訴えられた凛はますます困惑している。
その凛の眼が、ただひとり主張して来ない真琴のほうへ向けられた。
眼が合った。
真琴は優しく微笑んだ。
すると、堅くなっていた凛の頬がやわらいだ。
凛は笑い、真琴のほうへ駆け寄った。
真琴は笑顔のまま、慣れた手つきで幼い凛の身体を抱きあげる。
Winner 真琴!
長身の真琴に抱きあげられて喜んでいる凛と、その凛の笑顔を見て嬉しそうに笑っている真琴を、残りの者たちは少し離れたところから眺める。
「……まこちゃん、自分が選ばれる自信があったんじゃない?」
「真琴先輩は歳の離れた弟と妹の面倒をよく見ていて、幼い子供の扱いには慣れてますからね」
「真琴、ずるいぞ」
「凛先輩に選んでもらえなくて残念です……」