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デュエット試聴で小ネタ&感想

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二度目のお泊まり(遙凛)



凛は七瀬家の風呂からあがった。
今日は土曜日で明日は日曜日だ。鮫柄学園の寮の外泊許可は取ってきた。そんなわけで、寮には帰らずに、七瀬家に泊まる。
七瀬家に泊まるのは二度目である。
前回は凛が先に風呂に入ったが、今回は遙が先に風呂に入った。
遙が風呂に入っているあいだに、前回同様、真琴は蓮と蘭を寝かしつけないといけないからと言って橘家に帰っていた。
凛は少し長めの髪をタオルでガシガシと拭きながら、遙のいるほうへ行く。
居間へ足を踏み入れた。
台所に面している戸が開いている。
遙は台所にいて、背を向けて立っている。
凛はその背中に声をかける。
「ハル、いい湯だった」
「そうか」
ふり返らずに遙は返事をして、さらに続ける。
「Tシャツ、机に置いておいた」
「ああ、サンキュ」
前回は引き出しに入っていたのだが、今回は机の上に用意してくれてある。
また深海魚のTシャツなのかと思いながら、凛は机に置かれたTシャツを手に取り、たたまれていたのを広げる。
「なんだコレは!?」
妙な柄のTシャツがあるという心の準備はしていたのに、思わず前回と同じ台詞が口から飛び出していった。
大部分が真っ白いTシャツの表には、良い羊飼い、と書かれている。
「おい、ハル、これ、まさか……!?」
凛はTシャツを持ったまま遙のほうを見た。
遙がふり返る。
いつもの無表情で、サッとブルーのエプロンを外した。
エプロンの下には、凛が手に持っているのと同じ形で、大部分が真っ白いTシャツがあった。
そこには、マハーパジャーパティー、と書かれている。
凛は声をあげる。
「俺がイエスで、おまえがブッダなのかよ!?」
「……さすがだ、凛、よく気がついた」
遙の顔に、かすかに満足そうな表情が浮かぶ。
凛は、あぜんとした。
「ってことは、コレもソレも、おまえが作ったのか……」
「ああ、そうだ。俺は物を作るのが得意なんだ」
「いや、そういう問題じゃねぇだろ」
近づいてくる遙に対し、凛はツッコミを入れた。
「わざわざ自作するほどの物なのかよ?」
「俺はああいうゆるい生活をしたいと憧れているんだ」
遙は答える。
「おまえと、ふたりで」
その頬がほんの少しだけ赤らんだ。
けれども、凛はそれに気づかずに言う。
「なんで俺がイエスなんだ?」
「髪が長いからだ」
「俺の髪はあそこまで長くねーよ! だいたい髪型の問題なら、おまえ、ぜんぜん違うだろ!!」
「じゃあ、俺はパンチにする。それで問題ないだろう」
「問題大ありだろ!」
「それで、俺とおまえは、パンチとロン毛として商店街のスターになろう」
「そのコンビ名、思いっきりパクリ! ってか、断る!!!」
「……そうか」
遙は少し沈んだ声で返事をした。その視線は斜め下に落ちている。どうやら気落ちしているようだ。
凛はなんだか申し訳ない気分になった。
「いや、パクリは問題だろ。それに、お笑いでコンビ組んでデビューしてぇとは思ってねーし」
なだめるように言った。
すると、遙は眼をあげて、凛を見た。
「じゃあ、一緒に暮らすのは問題じゃないんだな?」
「いや、鮫柄学園は全寮制だから無理だ」
「それなら、高校卒業後」
「うん? ああ、うん、まあ、それなら……」
遙がTシャツを自作してまで放ってきた渾身のボケのインパクトが大きすぎて、ついうっかり、凛は高校卒業後に遙と同棲することを了承してしまった。