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Monday Morning Trap

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 起きたくない。

 カーテンの隙間から殺人的な光線を浴びせてくる忌々しい朝日。逃げるように布団を頭まで被って背を向けた途端に、

「オラ、クソ大佐遅刻すん、ぞっ!!」

 チンピラのような掛け声と共に腹部に衝撃が走った。
 そうだ昨日は君が泊まっていったんだった。寝惚けた頭が急速に覚醒する。自然と笑みが零れた。
 昨日久しぶりに東部に帰ってきた鋼のと、珍しく非番だったせいですれ違い、しかしそのおかげで意地っ張りの鋼のが直接家を訪ねてくれるという僥倖に恵まれた。
 私がそんなチャンスを逃すわけもなく、かくして朝一番に鋼のの声を聞けるという幸福を味わっている。こんなMonday morningなら悪くない。


「もう少し優しく起こしてくれ」

 軽口半分本気半分で口にすると、予想通り『アホなこと言ってんじゃねぇ』と大変可愛くない返事が返ってきた。
 しぶしぶ起き出して寝癖を直して、出勤用の白いシャツに着替える。寝間着に手をかけたあたりから逃げるように部屋を出て行った鋼のは、すでにいつもの服に着替えてしまっていた。
 あまり使われることはないが、折角彼のために誂えた寝間着姿をもう少し堪能したかったのに残念だ。

「おいっ、グス大佐!! 早く降りて来い、メシが冷めるだろうがっ」

 クソ大佐の次はグズ大佐か。色々とバリエーションがあるらしい。
 それはともかく、あの鋼のが朝食を? これは思った以上にツイてるらしい。彼が泊まっていってくれただけでも最高に幸福なのに、モーニングコールに朝食付きとは。
 
 新婚のようじゃないか。

 年甲斐もなくうきうきしながら階段を下りていくと、決して広くはない台所のテーブルの上に幸せを絵に描いたような朝食が並んでいる。
 狐色に焼かれたフレンチトーストに添えられたベーコンエッグと黒胡椒とバジルのマッシュポテト。コーンスープが湯気を立てるマグカップの横にはミモザサラダの入ったガラスボウル。

 し、新婚だ…っ!!!!

 床に膝をついて感動に打ち震える私に、照れているのかいつもよりぶっきらぼうな鋼のが『さっさと座れ!!』と怒鳴る。

「私は幸せ者だな」

 率直な感想を口にすると、ミモザサラダのプチトマトのように真っ赤になった鋼のが乱暴にコーヒーを差し出した。

「冗談はいいから、早く食わねぇと遅刻だぜ」

 彼の言うとおり実は結構洒落にならない時間帯。
 月曜日の朝は定例会があるためいつもより出勤時刻が早いのだが、それを知らない鋼のはいつもどおりの時間の予定で起こしてくれたらしい。
 しかし、こんな可愛い彼の作ってくれた朝食を食べずに家を飛び出すことなど不可能。
 全てたいらげて、心から美味しかったよと伝えて、あわよくばキスのひとつもプレゼントせねば男が廃る。

 上官の嫌味も中尉の弾丸も覚悟の上だ。
 待ち構える受難の数々を思っても笑みが零れる、君からのMonday Morning Trap.

作品名:Monday Morning Trap 作家名:紅城なぎ