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ラストボイス

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最後に君が言った言葉が今も耳の奥に残っている。

ほんの短いその言葉に込められた
‘ありがとう’や
‘ごめん’や
‘淋しい’や
‘愛しい’は
全部俺の中に染み込んだ。

俺が同じように返した言葉を君は受け取ってくれただろうか。君よりも幾分懺悔が強く含まれてはいたけれど、同じように君に伝えた。
おそらく受け取ってくれたんだろうね。
だからこそあの時笑ったんだ。

辛くないよ、これは一つの結末だった。
今はそう思えるから。

この左目は君への手向け。
いらねぇよバカとか、きっと君は言うんだろう。
ああ、絶対そうだ。君は証など欲しがらない。まして私の痛みなど。

そしたらこれは俺のけじめだ。この目に映した君の姿を、想いを、愛しさを、半分だけ抱えて生きていく。
全てを抱えるにも捨てるにも、君の存在は大きすぎたから。

君のくれた心と君に注いだ愛情を、今半分だけ捨てる。
許してほしいとは思わない。思ってもいけないんだろう。
めちゃくちゃに怒られそうだ。

そんなことではないんだろう?
君が私に託したものは。

私も君に『忘れるな』なんて言えないし、思ってもみない。
ただ足枷になるだけの想いなんて預けたつもりはないんだ。

それでも全てを忘れることだけはしないで欲しい。

ただ前に進む強さになれたらいい。
君の強さになれたらそれだけで、私たちが出会ったことに意味があったと言えるから。


ありがとう。


そして、さようなら。


作品名:ラストボイス 作家名:紅城なぎ