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さめないゆめの(ウク露/APH微エロ)

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ロシアちゃんと甘い甘い蜂蜜よりもとろりとした声で姉さんが僕の名前を呼ぶ。
ろしあちゃんろしあちゃんわたしのかわいいかわいいろしあちゃん。
姉さんの言葉にはなんの意味もない。くすくすと笑いながら何度も何度も僕の名前を呼んで、農業で荒れた指先を髪に差し入れてくしゃくしゃに掻き混ぜる。吐息で触れて、肌で触れ合って、指先で存在を確かめる。
白くて柔らかな姉の肌はどこもかしこも温かく、いつだって日向にも似たいい匂いがした。少しだけ温めて砂糖を入れたミルクの匂いもする。たぶん、母親がいたなら母親はこんな甘やかな匂いがするのだろう。
姉さんは天日に干した藁のにおいがするねといえば、姉は深い碧の瞳を眇めてロシアちゃんは雪のにおいがするのにねと笑った。
姉さんの瞳は冬を迎える森の緑に似た深い深い緑色で、冷たさよりも温かさを感じさせる。姉の身体はどこもかしこも柔らかい。よくこんなふにゃふにゃした身体で生き抜いてこられたものだと感心するほどに。
母親に抱かれる幼児のように弾力のある胸に顔を埋めれば、くすぐったいのか姉は少しだけ身じろいで少しだけ声を立てて笑った。くすくすくすくす。柔らかな笑い声が耳朶を打つ。
拒絶はされない、されるわけがない。
甘えるように擦り寄れば、姉は抱き寄せるようにして後頭部に回した腕に力が篭めた。
ぺったりと耳を付けた姉の左胸からはとくりとくりと心臓の音がして、とくりとくりとくりとくり、規則正しくゆっくりと心臓が鼓動を刻む。その音は酷く僕を安心させるから、ずっとずっと聴いていたかった。
ろしあちゃん、と姉が呼ぶ。
答える代りに姉の背に回した腕に力を込めた。肉体が邪魔をしてどれだけ近くに寄り添っても、決してひとつにはなれない。そんなことは嫌というほど知っているのにそれでも隙間をなくすようにぴったりと身を寄せ合って足りない部分を補い合う。
ろしあちゃんろしあちゃんかわいいわたしのろしあちゃん、ずっとずっといっしょよと姉が笑う。叶わないこととわかっていながらも、肌を重ねるたび何度も何度もそう繰り返す。姉は答えを望まない。僕も答えない。答える代りに、ただ姉の身体にすべてを預け目を閉じる。
とくりとくりと規則正しくゆっくりと刻まれる心音を追いかけて、姉に身を任せ夢の中へと落ちていく。おやすみなさいろしあちゃんいいゆめを、眠りに落ちる間際に囁かれるのを聞いたけれど、きっと夢などは見れない。
埋めて埋もれて、それでも肉体は粘膜と肌を境界にする。近しいけれど、どれだけ国境を接しても僕らが国である限りどちらかが相手を飲み込んで殺してしまわない限り、きっとどれだけ溶け合ってひとつになってもずっとずっと離れたままなのだ。

I want to die in not get up dream.
   (さめないゆめのなかでしんでいきたいの)