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愛とはみにくいものですね

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まるで女に触れるように、その白い肌に触れた。壊れ物のように、優しく掌を滑らせる。少々乱暴に扱うほうが反応が愉しくて、行為中はついついヒートアップしがちであり、こんな風に触れたのは久しぶりのことだった。
クロコダイルは未だ夢の中である。密着した肌が呼吸にあわせて、穏やかに上下する。この男が身を寄せあって眠ることに違和感を持たなくなっていると思うと、猛禽を飼い慣らしたかのような気持ちがする。フッフッフッと男は笑った。

ただ優しく愛してやりたいと思う日もあるのに、女扱いはひどく男のプライドを傷付けるらしく、射殺されそうな目で睨みつけられるのが平生である。それに煽られる自分も悪性としかいいようがない。さすがにベッドから落ちてまで没頭したのは、歳がい無いとは思うが。まぁ、そんな日があってもいいだろう。
眠っているときにしかこんな触れ方を許さない男のプライドの高さが何より気に入っている。仕方ない。どうにも男の支配欲を煽るのが得意すぎるこの男が悪いと言いたくもなる。きつく眉を寄せながら、漏れそうになる声を堪える様子は筆下ろしを済ませていないような坊やであれば、それだけでどうなってしまうやらという痴態。態度では全力で拒否するにも関わらず、中はいやらしく絡んで離そうとしない。そんなギャップに落ちない男はいないだろう。しかも無自覚にやっているのだから、油断も隙もないってもんだ。
「クロコちゃんはこれだから困るんだよね。」
今日はそういう気分だったので、気まぐれに腕を手錠で拘束し男のスカーフで視界を奪った。擦れた跡が赤い。指先を走らせれば、少し熱を持っていた。未だ濃い香りが充満したこの部屋では、こうして触れることさえ愛撫の一部のようだ。
そこまで考えて、ふと我にかえった。なんだかまるで愛だのを語らうようで、くつくつと笑いがこみあげてくる。

このつまらない世界を愉しむためには壊れない玩具が必要である。とびきり高級で、とびきり高慢な。時には殺されかかることさえ、快感だろう。そして、その逆も。
俺だけを見て、嘲って、そして想え。憎しみでも何でも構わないから、全てのものを見る度に俺を思い出すよう教えこんでやりたい。それほど、深く強く俺を刻みたいのだ。この遊びには壊してはいけないというルール以外は存在しない。そんな歯がゆさを愉しむのだ。

さぁ、夜明けはまだ遠い。男はもう一度眠りについた。