繰り返す日常
――――――――――――それが俺たちの日常。
「あのさぁ、いいかげん子供じゃないんだし仲良くしなよ」
新羅が二人のピリピリとした空気に流石に疲れたのか口を挟んだ。門田はいつものように臨也というよりは静雄側に座って本を読んでいた。新羅は仕方がなく臨也のほうに座って弁当に舌鼓を打っていた。しかし、肝心のにらみ合っている獣のような人間二人は食事どころが動きすらない。
「今日は何で喧嘩をしているの?」
新羅が仕方がなく問うと二人は勢いよく新羅のほうを見た。
「シズちゃんがいちご牛乳なんか飲んでるからだよ」
「いちご牛乳なんかじゃない。いちごオ・レだ」
「どっちでもいいよ。馬鹿なんじゃないの頭」
「・・・・・・・・・手前こそコーヒー牛乳なんか飲んでるたぁいい覚悟だな」
「はっ・・・・残念ながらこれはコーヒー牛乳なんて貧相なものじゃなくてカフェオレなんだ。流石シズちゃん。カタカナも読めないとは尊敬に値するよ」
臨也が鼻で笑うと静雄の眉間にピキリ、と青筋が立つ。新羅はやれやれ、とさりげなく門田のほうへと移動した。二人の間には見えない炎が渦巻いている。
「臨也はいちごオ・レが嫌いなのか?」
門田が本から顔を上げて聞くと臨也は鋭い目のままで門田に目も向けずに答えた。
「大好きさ」
その答えにはぁ、と大きくため息をつくと今度は静雄のほうを見た。
「静雄はカフェオレが嫌いなのか?」
「嫌いなはずがねぇだろ・・・むしろ大好きだ」
なんなんだこの二人は、と新羅はほとほと呆れた。ならば喧嘩をする必要もないのにと心の中で思いながらセルティが作ってくれた弁当を一口一口味わって食べた。
「俺が大好きないちごオ・レをシズちゃんが飲んでいるのが許せないんだよ」
「ノミ蟲ごときがカフェオレなんざ飲んでんのが気に食わねぇ」
二人は飲みかけのいちごオ・レとカフェオレを地面に置くと立ち上がってつかみ合いを始めた。これが毎日の風景。喧嘩の原因は違えど毎日のように繰り返す日常だ。新羅はもう構わないと心に決めて二人から目を離す。門田は悟りを開いたように本を夢中になって読む。4人しかいない屋上には5月の生暖かい風が吹く。
これが僕らの日常。俺たちの日常。