帝臨①
帝人の休日を狙って朝から家へと押しかけた臨也は、一度視線を向けただけでモニターへと意識を戻した帝人へ不満の声をあげる。
「そんなのいつでも出来るじゃない。俺だって暇じゃないんだよ」
帝人の肩に手をかけてパソコンへと手を伸ばすと、マウスから手を離した帝人が臨也の頭を押さえ強い力で自らの膝の上へと押し付ける。
「えっ、ちょっと何?」
「終わったら構ってあげますから、もう少しだけ大人しくしていてください」
左手で臨也の頭を撫でながらも未だモニターから目を離すことなく告げる。
「もう少しだけだよ」
触れてくれる優しい手つきに少しは満足を覚えると、その温もりをもっと感じようと目を閉じる。
「……帝人君?」
頭を撫でていた感覚が消えキーボードを打つカタカタとした音が聞こえてくると静かに目をあけて帝人を見上げて名前を呼ぶ。
「ねえ、まだなのかい?」
臨也の方へ視線を向けることのない帝人へ手を伸ばして自分の存在を思い出させるように襟を軽くひっぱる。
「もう少しですよ」
ため息をついて言うと臨也の手を掴んで離させ大人しくさせるために再び頭を撫でてやる。
「……っ、もういいよっ」
2度、3度と繰り返し意識を臨也から離してしまう帝人に腹を立てると起き上がる。
「もう帝人君なんて知らない」
怒りを露わにするものの帰ろうとはせず部屋の隅にたたんで置いてあった毛布を引き寄せて包まると帝人に背を向け目を閉じる。
「やっと終わったー」
いつもよりもかかった作業時間に帝人は伸びをして背筋を伸ばそうとするとシャツを引っ張られる感覚がして振り向く。
「……かわいいなあ、臨也さん」
離れて眠っていたはずの臨也がシャツをつかめるほど近くに来ていた事に笑みを浮かべると、ゆっくりと手を離させその手を握ったまま顔を近づけこめかみに口付けを落とす。
「顔、赤いですよ」
赤く染まった頬に指を這わすと臨也は帝人から距離を取るようにして起き上がる。
「最近の帝人君かわいくない。前はあんなにかわいかったのに」
主導権を握っていたはずがいつの頃からか逆に臨也を翻弄するようになった帝人と目が合わせられずにそっぽを向く。