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空の青と本当の気持ち【サンプル】

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「謝ってくる気、ない?」
二年生以下を練習に向かわせ、三年レギュラー陣のみで残った部室で幸村はそう口を開いた。練習には参加しないため全員制服のままだ。
ミーティングの書記を務める蓮二が若干のタイムラグをはさんでノートから顔を上げた。
「…もしかして俺に言っているのか、精市」
「そうだよ。だってお前のせいじゃない」
全面的に自分が悪いと断言され、果たしてそんなに責められるようなことをやらかしただろうかとしばし考える。
「幸村君、柳君のあの表情ではどうやら全く伝わっていませんよ」
「むしろ思い当たらないんは、自分の責任問題と思っとらんからじゃ」
部長の矛先が珍しく蓮二に向いているため、ギャラリー気分の人間達は言いたい放題だった。
「でもありゃ大半は赤也だろぃ。柳だけ行くのはちょっとおかしくね」
「お前なぁ、あいつ連れてってみろよ。余計な喧嘩売ってくるのが目に見えてるぜ」
「うーん本当は連れて行って欲しいんだけどね」
そろそろ少しは社会を学ばせないと、とどこか含みのある物言いの幸村には気づかず後を真田が次ぐ。
「うむ、赤也は新レギュラーの指導に当たらねばならん。この場を離れて貰っては示しがつかん」
「そうなんだ。外部との折衝の前に内部固めから始めなきゃいけないんだよねー来年の新入生も大変だなぁ。俺もう部長じゃなくて良かった」
「たるんどるぞ幸村。お前には来年以降も高等部でチームを率いるという重大な責務をだな」
「勝手に話を進めてもらっては困る。つまり決勝の試合内容について青学に謝罪をしに行けということか」
脱線気味の話をふつりと遮って蓮二は幸村に問い質す。
「そう、赤也の分もね。乾のあの包帯姿思い出すと腹が捩れ…流石に気の毒に思ってね。勝ったのならともかく負けておいて何もなしっていうのもどうかなーって」
――この人完全に今、勝てば問題ないと言ったな…と部室に居る大半の人間が思ったが、その全員が口を挟むといい事など一つも無いと分かっていた。
「俺は勝っただろう」
「でも準優勝でしょ。勝者には敬意を払わなくちゃ」
「微塵も思っていないことを口にするべきではないぞ精市。口が曲がっている」
「とにかく、行ってきてね。手土産はカンパしてあげる。赤也の代わりに誰かお供つけようか?」
ボスの一言で沈黙を保っていた面子に緊張が走る。誰だって敗戦校に頭を下げに行くなど喜んでしたいことではない。幸村がそれを面白がって視線を巡らすと、向けられた者は目が合う前に次々と足元や明後日の方向を向いた。
真田など幸村相手に顔を背けはしないが「自分は手塚に勝ったのになぜ頭を下げなければならない」と顔に書いてあるにも関わらず、額に大量の汗を浮かばせている。
「ほい」
その緊張を破ったのは、椅子に凭れながら気だるげに挙手をした銀髪の頭だった。