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アラガミになった訳だが……どうしよう

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朝起きたら知らない場所にいた、なんて使い古された言葉を正しい意味で使う羽目になるとは思いもよらなかった。
昨夜は確かに、自分のベッドで冷房をその年で初めてかけなければならなかった暑い夜にうんざりしながら眠りについた筈なんだが……目が覚めるとボロボロのビルの一室で床に寝転んでいたという訳なんだ。
最初は自分は寝ぼけているんじゃないかと考えてもう一度眠りについたのだが、再び目を覚ましてもビルの中であることは変わらなかった、強いて変わったことと言えば外が朝から夜に変わったことくらいか?
まぁ、理屈も何も知らんがこうなってしまったのだからどうしようもない、ゴネたところで何か変わるわけでもなし取り敢えず人を探すとしよう。
水やら食料がこの辺りにあるとは思えないしな。何しろ、外を見渡せば周りにあるのは廃墟ばかりで人の気配など欠片もないのだ。
さて、まずやることは自分の現状を確認することだ。
体は……特に怪我はないか。身長168cm、体重51kgの比較的小柄な男の体だが…こんなに色白だったか?それに髪の色も少しおかしい気がするな…まぁいい、夜ということもあるし光の加減だろう。
服は寝巻きの紺色の甚平、新品に近い状態だが靴が無いのは些か危険だな。
ガラスやらが転がっている可能性もあるから、どうにかして手に入れなければ裸足では洒落にならない傷を負ってしまうな。
持ち物は……お気に入りの携帯音楽プレーヤーとイヤホン、寝る時に体にかけていたタオルケットだけか。音楽プレーヤーがあればライトの代わりには多少なるだろう。
それにしても……野犬でもいるのか?やたらと外から唸り声が聞こえるではないか。少々厄介だな……近くに何か身を守れそうな物はないだろうか?
軽く辺りを見回したが特にないな、仕方ない、近くの瓦礫をこの部屋の入り口に置いて軽くバリケード代わりにするか、何も無いよりは幾分かマシだろう。
火でも起こせればそれがいいのだが、この部屋にはそういった類の物はなさそうだし、それ以前に燃えそうな物すらない。
さて、無事にここで生きていけるかたまには普段信じてはいない神にでも祈るとしよう。
さて、こうも野犬が多くては迂闊に眠ることもできんな、寝ている間に喰われるなどあまりにいただけない最期ではないか。
どうやって時間を潰したものか?
そうだな、昨日俺の行動でも思い出そう。休みの日だったのとその前のバイトが面倒だったのもあって、朝からのんびりとアイスを食べたり音楽を聞いたりと自堕落にやっていたな。
そして、眠る前に友人からメールでゲームに誘われ、オンライン通信で遊び2、3時間潰して眠りについたのだったな。ソフトは何だったか……いかんな名前が浮かばん。
自分でも分からん内に大分混乱しているみたいだな、確かにこんな状況は性質の悪い冗談みたいだからな。そう納得するしか他ないだろうし、そうでも思わなければこの状況はやってられん。
それにしてもここの月やら星は綺麗だな、空気が澄んでいるのか?理由はなんだっていい、ここまで綺麗に空が見えたのは学生の頃のキャンプ以来だ。
そうだな、この夜空を見ながら一夜を明かすとしよう。
正確な時間は分からんが月の位置からして……深夜零時辺りか?一、二時間の差はあるだろうがその辺りの時間で寒さも暖かさも感じないとは、春半ばか秋半ばなんだろうな。
どちらにせよ過ごしやすい季節ということに変わりはない、これは中々にいい情報だ。少なくとも凍死や熱中症やらの心配はある程度せずに済みそうだし、人が外を出歩く確率も高いだろう。
明日は取り敢えず水場の確保ともう少し快適な寝床の捜索だな。水、食料、良質な睡眠、この三つがあれば少なくとも死ぬことはない。
それにこの周囲の荒れ具合からして人が来ることはないだろうし、この部屋に残った物を見たところ火事場泥棒も済まされているようだ。
十中八九、この周辺に救助が来るには既に時間が経ち過ぎているだろう、その為にもある程度ここで生き残る準備と活動の拠点を作って人がいそうな場所を探していこう。
下手に動いてもロクな事にならないのは世の中の真理に近いものがあるからな。
うん?野犬は何処かに行ったのだろうか、唸り声やらが聞こえなくなったぞ。
あまり眠くはないが、体内時計を露骨に狂わせるわけにはいかんな……もう少しこの星を見ていたいが、軽く眠るとしよう。



で、夜が明けたわけだがどうにも肌と髪が露骨におかしい。俺は黄色人種だったはずだが白人も真っ青な白い肌と同じよな色の髪、これはどういうことだ?何かの病気か?
だとすればこれはマズすぎる……水場がどうこう以前に人を見つけて治療を受けなければならない。
どんな症状が出るのかは知らんが、ここまで体に異常が出ているとなると医者でもなんでもない俺でも危険だとわかる。兎に角外に出るか、靴は……仕方ない足元を確認して進むしかないだろう。
幸いと言うべきかガラス片等で足を傷つけることなくビルから出られた。
いやはや、本当に人のいそうな雰囲気など全くないな。ビルの残骸がやたらとあるな…都市レベルでこの被害とは地震か何かか、最悪の場合戦争か?後者ならばいきなり撃たれかねん、病気持ちとなると確実に殺されるな。
少し歩き回ったがやたらとデカイ教会がある位で特に目ぼしい物はないな。取り敢えず、その教会の中で休憩している訳だが……何故か、この辺りの地形にはどうも覚えがあるな?
こんな場所には来たことなどない筈なんだが……
む?いかんな、また野犬か?
全く野犬が多すぎるぞ、この辺りは!!
昨夜といい、今といい一体なんの因果だ?
武器も何もないんだぞ!!
全く、久しぶりに神に祈ったらこの様か。やはり、神などロクなものではないな。そんな事よりもここを乗り切らねばならんな、流石にまだ死にたくはないしこんな訳の分からん状態で理不尽に死ぬなど認めてたまるか!!
一匹ならばタオルケットを腕に巻いて防具代わりにすることでどうにかできるが、二匹ならどうにもならん。
さて、この辺りは運任せだが一匹である事を願うより他ないだろう。
もっともそういう時は想像の斜め上を行くことは多いという事を考えるべきなんだが、その時の俺には如何せん余裕が無かった。
勿論、結果は俺の想像の斜め上を行ったのだが、そんな想像ができる奴がいるというならば会わせて貰いたいものだ。
目が覚めれば廃墟のビルの中、周囲に人はおらず聞こえるのは獣の唸り声のみ。その上、実はその獣の正体がゲームのキャラクターなど想像できる筈がない。


「……オウガテイル?」
そう、友人とやっていたゲーム、ゴッドイーターの雑魚キャラであるオウガテイルが一匹立っているのだ。こんな事で忘れていた事を思い出すなど勘弁願いたいのだが……
目の前のオウガテイルは非常に残念ながら、それがコスプレで無いことは一目瞭然だった。血の匂い、獣の息遣い、肌からヒシヒシと伝わってくる敵意、これがコスプレならば即刻役者になる事をお勧めする、間違いなく大成する演技力だ。まぁ、そんな考えはただの現実逃避なわけだが……