夢の中で泣いてた君
僕が彼に抱くものは何だというのだ。かといって、これが特別な感情でなければ呼び方が分からない。涙なんて生理的にしか流すことはないけれど、彼を見ると自然に込み上げてくる気持ちは泣きたいような気持ちだった。もしかすると、僕は泣いているのかもしれない。僕よりも武骨なその手に触れられれば馴染むことを意識から離れたところで喜ぶ。こんなのは知らない。理解しようとしてもどうにもならない。灼けるように渇く気持ちを持て余してしまう。
「咬み殺したい。」
この不可解な感情はいつか僕を弱くするだろう。心を根から腐らせて、殺すのだ。彼ならこの感情に何という名前をつけるだろうか。きっと単純に答えを見つけ出し、笑うのだろう。それはまた僕を泣きたくさせるに違いない。
「咬み殺したい。」
自分の手よりも大きく温かな山本の手を包んで、僕も眠ることにした。