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よこせよ。

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「ねぇ、シズちゃん。申し訳ないんだけど俺からシズちゃんにプレゼントできるものはほんのわずかしかないよ」
「なんだよ急に」
静雄の部屋。臨也は静雄が座っているソファに腕ををつきながら覗き込むようにして言った。右手では器用に携帯電話をいじり、目は静雄のほうなど向いてはいない。それでもその言葉は少しだけ静雄の心に影を落とした。
臨也は真面目な話ほど不真面目に話す。それは長いこと一緒に喧嘩をしたり話をしたりしている中で学んだことだ。
「俺は金はあるからシズちゃんが望めば大体のものは買って与えることは出来る。でもね、考えたんだけど本当にシズちゃんが望んでいるものは買えないものだ。俺はそれをシズちゃんにあげることはほぼできないと思うんだよね」
唐突に言い出した臨也は携帯電話をス、と閉じた。そのままソファにうずくまってしまった。
「ホント嫌だよ。俺なんかより田中トムや平和島幽のほうがシズちゃんがほしがっているものを与えられるだなんてね。認めたくないけど俺は現実を否定するほど愚かな人間ではないしそれはそれで真実だと心に留めている。それでもさあ、なんかムシャクシャすると思わない?俺が愛している人間を一番に喜ばせられるのは俺以外なんてなんだか嫌だよね。あー嫌だ嫌だ。本当ならどこぞの誰かに計画的に彼らを殺してもらっちゃうなんて方法もなくはないんだけどそうするとシズちゃんはシズちゃんじゃなくなっちゃうし二律背反だよ」
臨也が口にした言葉に静雄ははぁ、とため息をついた。トムや幽はたしかに大切な人間だ。殺されでもしたらその相手のところへ行って相手を殺しまうかもしれない。それでも臨也はそのようなことはしないと静雄は分かっていた。これは願望ではなく決定事項のように間違いことだった。
静雄は少なからず臨也を信じている。こうして危ないことを考えながら最後にはいつものようにこうして同じ部屋でくつろいで満足して帰っていく。人は臨也を信じるに値しない人間だと言うが静雄はそうは思ってはいない。かすかにだが気付いている。
学生時代からどんな形ででも傍にいたのは門田と新羅と臨也だけだった。喧嘩はしながら満更でもない、などと考えていたことは臨也には秘密だ。
「トムさんや幽を殺されるのは困るけどよ。手前からは・・・・・・まぁ、色々ともらってる」
「・・・・・・・・・・・・?そうかな?」
「手前は気付いてないけどな」
臨也からもらっているもの。こうして臨也といる時間が案外嫌いではなかったりする。静雄は幽がのっている雑誌を読み、臨也はだらしなくソファに背中を預けながらテレビを見る。たまに静雄が台所から食べるものを持ってきて臨也は嬉しそうにその菓子を口に抛りこむ。
「え、なになに?俺もしかしてもうちょい自信もっちゃってもいいかんじだったりする?シズちゃん嬉しかったりする?」
満面の笑顔で足にまとわりついてきた臨也に静雄はにらみ返す。
「うるせぇ。調子に乗るなノミ蟲」
照れているのがばれないように持っていた雑誌で臨也の頭を叩いた。臨也は痛い、と一言言って足から身体を離す。
「でもよかったよ。シズちゃんって何気に優しいよね」
「何気にっていうのが引っかかるが褒め言葉だと受け取るよ。大体手前だけだよ。俺をあそこまで怒らせるのは。あと池袋にくるな」
「シズちゃんに会いに来てるんだよ」
まるでけしごむ取って、というように放たれた言葉はひどく恥ずかしいものだった。あわてて雑誌で顔を覆い隠す。臨也は絶対に雑誌を挟んだ向こう側でにやにやしているだろうと胸で自らを叱りながら。
実際に臨也も自らが口にした小さい一言に恥ずかしそうに眉を寄せた。それ以上に困るものだったのはソファの上にいて雑誌で自らの顔を覆っている正直なかわいい人間だった。
「ま、とにかくだよ。俺はこれからも池袋にくるけどね」
「く、来るなら俺の家まで先に来てればいいだろ。なんでわざわざ街中まで来るんだよ」
「だってここで見れるシズちゃんの顔と街で取立てしてるシズちゃんの顔は違うもん。俺はさ、シズちゃんの全てに興味があるんだ。俺の予想や推測を上回るシズちゃんの反応にはいつも驚かされるよ」
ひどく楽しげに臨也はテレビの電源を落とした。静雄はようやく雑誌を顔から話してふぅ、と息を深く吸った。臨也はその様子を目を逸らさずに眺めていた。
「個人的に言わせてもらえばシズちゃんのどんな顔も見てみたいと思ってる。悲しんでる顔も絶望に歪んだ顔も。でもね、やっぱり好きな人間には笑っていてほしいと思うのが人間の心理でしょ?そしてこれはホント個人的になんだけどね。シズちゃんの恥ずかしがってる顔とか抜け出せない快楽に緩んだ顔も見てみたい。俺しか見れないでしょ?それはさ?」
にやりと口角を上に引き上げると獲物を見つけたように臨也は笑った。静雄は呆れたようにまた息を吐いた。そのまま臨也に向かって両手を伸ばす。



―――――――――――――よこせよ。
作品名:よこせよ。 作家名:安手井 新