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野菜の日

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今年の夏の暑さは、体力があまりないアムロを疲弊させた。
もとよりあまり食に興味が無く、気を付けて食べさせないと痩せてしまう彼の食事の一切を私が請け負っているのだが、それでも食べれないと言われてしまうとどうしようもない。

「アムロ。庭で採れたトマトとオクラとか言う身体に良い野菜で、あっさりとした料理を作ってみた。食べてみないか?」

 ベッドにぐったりとなっているアムロに声をかけたのは、朝日もかなり高くなった頃だった。

「ごめん、シャア。あまり食欲が湧かないんだ」
「そうは言っても、昨夜も冷製スープ一杯とサラダを二口摂っただけだろう?明らかに痩せてきてしまっている。私を安心させると思って、食べてくれないかね」

他人に心配をかける事を厭う傾向のあるアムロに要求を聞いてもらうには、こうして頼むのが一番効果があると言う事を、共に暮らし始めてから私は習得した。

「痩せてきてるのは、貴方が余計な体力を使わせるからだろうが〜」
「君を愛でる事が余計な事だとは思えないのだがね」
「貴方にとってはそうでも、俺にとっては、体力の消耗が、酷くなるん・・・だってば!」

腹立たしさに語調が強くなったアムロだが、体力をより消耗する結果となったのか、息が切れている。
「ああ。疲れてしまうから、そんなに大きな声を出さない方が良い」
「・・・だれの・・・せいだと」
「私以外に、君を疲れさせる者が居たら、即刻首を刎ねてやろう」
「物騒な事、言うなってば。・・・何?それ。いい匂い〜」
「リゾットだ。山鳥のひき肉と完熟トマトをみじんにした玉ねぎ・人参と一緒に米と煮て、粗熱を取りながら湧水で冷やした。そこに今年初挑戦のオクラをゆでて刻んだ物を乗せてみた。粘り気のあるものは、体力回復に効果があるそうだ」

私はそう言いながら、アムロの口にスプーンを運んだ。

「自分で食べるって」
「遠慮しないでくれたまえ。せめてこの一皿分くらいは食べて貰わねばな」

こうなると、私がけっして譲らない事を知っているアムロは、渋々口を開けてくれる。
冷めてもおいしい味付けをしているので、きっとアムロの口に合うだろうと思ったリゾットは、半分までをそのままで食べさせる事に成功した。
「同じ味では飽きがくるだろう?少し、粉チーズと長いもを混ぜてみるよ?」
「長芋?」
「ああ。チーズと一緒にすると、クリームの様な触感を加味してくれるし、これも体力回復と維持に効果があると文献に載っていたんでね」
トレイに準備しておいたクリーム状の物を皿に乗せて、アムロに食べさせる。

結局、一人分としては少なめながらも、よそっておいたリゾットはアムロの腹に全部収まってくれた。

「さっ。もう一眠りすれば、きっと元気が出てくるさ。このケールとレモンを絞ってはちみつを混ぜたジュースを飲んで」
「こいつは苦いから、好きじゃない!」
「良薬は口に苦しと、昔から言われているそうじゃないか」
「・・・誰から聞いたんだよ、それ」
「ノア夫人からだが?」
「ミライさんかぁ〜」
再び渋々と飲んだアムロの顔が、明らかに渋面となる。
「いい子だ、アムロ」
「おれは、子供じゃないって」
「今の君は、頼りなく頑是ない子供の様なものさ。私に構われてくれたまえ」

シーツを整え、窓からの風が直接当たらない様に調節をしてから、私は二人の寝室をあとにした。


 昔から野菜嫌いの傾向があると、ノア夫人ならびに幼馴染のフラウ・ボウから聞いている。
それでも、こうして手作り野菜で料理を作れば、彼は食べてくれる。

「愛情が隠し味・・・かな」

私は口角を緩めながら、空になった食器を洗うべく、キッチンへと足を進めた。



 「あの人に勧められたら、嫌だって言えないからナァ。俺が食べると、すごく嬉しそうに笑って見つめてくるんだから。
あの表情を曇らせたくないから、早く元気にならなきゃな」

くちくなった腹のお蔭で押し寄せてきた眠気に従いながら、アムロもゆったりとした笑みを浮かべていた。



 夏の午前中
それぞれの場所で幸せを感じている、元宿敵のライバルで今は終生の相手同士となった、宇宙世紀のNTだった。
2014.08.31
作品名:野菜の日 作家名:まお