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みんと@ついった中毒
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ぐだぐだする日だってある

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朝いつものように目覚ましが部屋中に鳴り響き、意識が浮上してきた。ガバリと腹筋を使って上半身を起こし、一度伸びをするとベッドから早々と出てしまって顔を洗いに下へ降りる。それがいつもの朝だった。いつもならばそうやってすぐに仕度を済ませて兄と一緒にゆっくりと朝ごはんを食べるのだが、今日は少しの違和感と共に意識を浮上させた。意識ははっきりとしているし、目は覚めているのだが身体が思うように動かない。おかしい、と思ったがその時にはすでにもう一度夢の世界に足を踏み入れていた。普段なら決して二度寝なんてしないはずなのだが、今日はそうではなかった。カーテンから漏れてくる光がちょうどよく眠気を誘い込んで、うつらうつらとまぶたを閉じる。布団を頭まで被ってしまうと温かさと柔らかさが同時に自分を包んで言いようのない幸福感に満たされた。このまま動きたくないと真に願うほどには心地よくたまらない誘惑だった。まどろんだ、暖かな真綿に包まれているような気分でうとうとしていると、突然ドアがいささか乱暴に開けられた。
「ルッツ、お前いつまで寝てんだ。目覚まし鳴っただろ?」
ドカドカと遠慮を微塵もも感じさせない態度でおれのそばまで来ると、布団を思いっきり剥がしてもう一度、ルッツいい加減起きやがれと少し怒ったような声でおれを叱った。
ぬるま湯に浸かっていたようなあの何とも言えない心地よさが急に取り上げられて――いつもの自分だったならそこで起きたのだろうが――おれはむうっと眉間に皺を寄せた。兄に奪われた布団をむんずと掴むと自分の方へ引き寄せてしまって、再び頭まで被るとまるでみのむしのような格好でそのままぴくりとも動いてやらなかった。再び心地よいそれに包み込まれるのを感じて、おれはほう、とため息を吐いた。枕に顔をうずめると、さらに心地よさが増す。
兄が起こしにきたことも忘れてそれに浸っていると、ルッツ!と兄が怒鳴り散らしているのが聞こえたがもう起きる気なんてしなかった。
「お前なあ、仕事があるだろ?どうすんだ」
「にいさんがいけばいいじゃないか。おれはきょうはこのままねているときめたんだ」
正論を言う兄に反論しようと口を開けると、自分から出てきたのは舌足らずな、子供じみた幼げな喋り方だった。うまく頭が回らなくていやだいやだ、と我侭を言う子供のようにそれを繰り返していると、兄はどうしたらいいのか困り果てたように、うーだとかあーだとか言ってなんとかおれをなだめようとしている。
「あーわかったわかった。おれも一緒に行って仕事手伝ってやるからとりあえず起きやがれ。」
お前が行かなきゃどうすんだ。と言いながら半ば引きずるようにしておれをベッドから離してしまい、そのまま茹だるおれをなだめながらリビングまで連れて行ってしまった。
にいさんはなしてくれ、おれはいかない、いかないぞ。とおれが駄々を捏ねると、はいはいわかったわかったと投げやりな返事をされるだけで相手をしてくれない。むっとして、もう一度にいさん、と言うと椅子にドカッと座らされて朝食を取るように命じられた。
いつ用意したのか、テーブルの上にはすでにパンやヴルストやチーズが並べられていて、仕方なしにその中から白パンをひとつ手に取るとそのままちぎりもせずに口にくわえた。もぐもぐという擬音語が合っているような食べ方でもそもそ朝食を取っていると兄がこれまたいつ用意したのか、ほらとコーヒーをおれの前に置いた。
「お前相当寝ぼけてるみたいだし、少し冷ましておいてやったから間違っても火傷すんなよ」
丁寧にミルヒまで入れてくれていたようだ。口に含むと苦味と甘さがちょうどよくて気分が少しだけよくなった。
おれが食べ終わったのを見計らって、兄がテキパキとテーブルの上を片していく。朝食の残りや食べた後の皿がテーブルの上からきれいになくなっていくのをぼーっと目で追っていると、ほら着替えて来い。と今度は背中を押されるようにして部屋に戻った。
部屋に入るとベッドがおれを誘惑するように布団が捲られたままの状態で鎮座していた。このままあの心地よさの中に身を投げ出してしまいたいと、ふらふら誘惑の元に吸い込まれるように向かいそうになったたが、着替えて来い。と兄に命じられたことを思い出す。こんな状態ではあっても兄の命令には従わざるを得ない。いつもの倍の時間をかけてゆっくりとクローゼットにかけられたハンガーからワイシャツとズボン、それからスーツのジャケットを取りそれをいったん床に放った。着ている寝巻きを脱いで、裏返ったままのそれをくしゃくしゃに丸めてぽいと床に放り投げてしまうと、ワイシャツやズボンをもそもそ身に付け始める。床に適当に置いてしまったからなのか、すこしワイシャツがよれていたが気にせずに着替えてしまうと、ちょうどよく兄が部屋に入ってきた。
「寝なおしてたらどうしようかと思ったけど、ちゃんと着替えてたな。」
いい子だ、と頭を撫でられてそれがとても気持ちよかった。着替えていた手を止めてうっとりとそれを享受していると、兄の手がはたと止まる。どうしたんだ?とおぼろげに顔を上げるといきなりワイシャツを掴まれて、なんだよこれ皺くちゃじゃねーか!と怒られてしまった。
着替えたのにどうして怒られなければならないのか、むむ、と納得のいかない顔で兄を見つめると、「ったくしかたねーな」と言って、ワイシャツのボタンをひとつずつ取って脱がしてしまうと新しいアイロンのかかったワイシャツをクローゼットの中から出しておれに着させてくれた。まるで着せ替え人形のように黙ってされるがままになっているとネクタイまでぴっしりと結んでくれていて、よしこれで大丈夫だと肩をぽんっと叩かれた。キレイに着させられて満足したのか、ひとりうんうん頷いている兄の肩に額を当ててぐりぐりと甘えるようにしていたら、いつまでたってもルッツは甘えたで可愛い奴だなーと笑われてしまった。
「にいさん」
「ん?」
「あまえたじゃだめなのか」
おれが拗ねたような口ぶりでそう言うと兄はけせっと笑って、まあいつも堅物で真面目くさってるお前でもこんな日があるんだな。とだけ言っておれの手を引いた。
いいじゃないか、こんなひがあったって。と頭の中でぼんやりと考えながら兄に引きずられて半ば強制的に仕事場に向かわされたのであった。