二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

変わらず いつも

INDEX|1ページ/1ページ|

 
「2週続けてこの道を通ることになるとは思ってなかったぞ」
ダンジョンのようなローマ市街地でハンドルをきりながらドイツは言った

「えへへ…かたじけないであります」
後部座席で少し肩をすぼめながらイタリアは言葉を返した

「お詫びにまた俺んちの観光案内するよー!ほら、みてみてドイツ!あの大きな柱!あれ爺ちゃんの上司が造ったやつだよー」
殊勝な態度から一変、自分の後頭部にジャレつく勢いのイタリアを往なしながら、
信号待ちの停車でちらりと窓の外に目をやり
「ふむ、証券取引所か…アントニヌス・ピウス帝が造ったハドリアヌス帝神殿の柱だな」
ドイツは的確に応えた

「すっげー!ドイツほんとに物知りだー 爺ちゃんのことなんでも知ってるねー!この間もネロ皇帝がそんなに悪い奴じゃなかったって教えてくれたし」
イタリアはつくづく感心しながらそう言い、
そして、小さな、素朴な、疑問を口にした
「でもドイツ、なんでそんなに詳しいの?」

「…」
ドイツは、言葉に詰まった。

古代ローマ帝国は憧れの存在だ 故に、
時間を見つけては古文書、地図、発掘品、各国に散らばるヒント、らくがきに至るまで研究している

と、言ってしまえばそれで済むことだ

だが、それだけでは済まされない何かが自分を突き動かしている

ここまで追い求める原因は何なのか…
…追い求める先には、知りたい事が全て存在しているのではないか
そんな気さえするのだ

憧れの国のこと
愛おしい国のこと
そして…

頭痛の予兆にドイツは車を路肩に寄せ、停めた

「…ドイツ、どうしたの?」
運転席の男の突然の変調に気付いたイタリアの
血の気の引いた声が後部座席から響いた

「すまんな 少し休憩を取らせてくれ 少し休めば大丈夫だ」
ドイツは座席の背もたれを軽く倒し、目を瞑り、浅くなっていた呼吸を整えた
その耳には、ある言葉が、くり返し、くり返し、聴こえていた

…ドイツ人、それが何処に居るのか私には分からない…

その声を遮断するように、瞑っていた目に更にギュッと力を込める

「イタリア」
「なに?ドイツ」
先程来ずっと心配げに様子を伺っていたらしい男の声が、間髪入れずに頭上から返ってきた

ドイツは、いつもなら(ましてや車の中とはいえ公道では)言わないであろう言葉を発した
「俺を好きで居てくれるか」

「え…?」
「これからも変わらず、恋人として、俺を好きで居てくれるか?」

「俺はお前の家に在るような歴史も何も持っていない。それどころか、俺自身が曖昧な存在だと、俺の家の詩人に言われてしまう始末だ。それでも傍に居てくれるか?」

瞑った目に左腕をアイマスクの様に被せてボソボソと言う男の問いに
イタリアは半ば怒ったように言った
「何言ってるのドイツ!?」
「俺はいつだってドイツが大好きだよ!大好き…」
ちいさく鼻を啜り、
後部座席から運転席の男の頭を、そっと包み込んだ
「…Ti amo…」

口づけた唇は氷の様に冷たくて、それが悲しくて何度も口づけた 

車のなかでキスしてたら警察が来てしまうかもしれないけれど、そんな事よりもこの男の唇を温めることの方が重要だったから

ベソベソ声のイタリアの後頭部をポンポンと優しく撫でながら
ドイツは「Danke」と何度も小さく呟いた

作品名:変わらず いつも 作家名:スープ