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敵中横断二九六千光年2 ゴルディオンの結び目

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しかし艦長は隊長にした。そんなやつであるからこそ……古代はどうやら死なすには惜しいとされた者であるのは、島操舵長を通じてすぐに知れるには知れた。あのかるたの札を見てもわかった。しかしそんなの、この〈ヤマト〉の戦闘機乗りは程度の差はあれ誰でもそうだ。普通はすぐに戦線に戻され、最新鋭機を渡されるかデカイ船を任される。長く生きれば古強者(ふるつわもの)……よっぽどのやつということになる。

普通はだ。古代は違う。だいたい、そんな選ばれし者が、〈がんもどき〉乗りになるところまで落ちぶれたなんて話は聞いたことがない。にもかかわらずそうだと言うなら、ほとんど神に生かされたとしか……。

タイタン以降、皆がそう思い始めた。だから余計に気味悪かった。この古代は疫病神でなければいけないはずなのだから。沖縄基地がなくなったのはこいつのせいでなければいけないはずなのだから。

なぜだ?とまた思った。どうして古代は疫病神でなければならない? 猛烈な速度で思いをめぐらせながら、加藤はふと前に眼を向け、古代が一度うなだれた首をまた起こしているのに気づいた。並んでいる全員を見、歯を食いしばるようにして、古代は面(おもて)を持ち上げていた。十秒前に〈疫病神〉を自分で名乗った男の眼ではなかった。頭の中のピンを留めていたものが、外れた音がしたかのように加藤は感じた。

「だが――」と古代は言った。「沖縄基地が吹っ飛ばされたのは、おれのせいであるわけじゃない」

え?と思った。なんだ。何を言い出す気だ。ワープのために唸りを強めるエンジンの音が聞こえてくる。古代はそれに負けじとするかのように声を張り上げていた。そうして言った。

「この船が敵と戦おうとしていたからだ」

そうだ、と加藤は思った。頭の中のピンはスルリと、なんの抵抗もなく抜け落ちた。