敵中横断二九六千光年2 ゴルディオンの結び目
と島が言う。だがそれ以上、言葉を続けられないようだった。そこへ新見が、
「さらに別の懸念があります」と言った。「ガミラスが増援を送って来ない保証もないということです。敵の船は今は百隻。しかしこれが二百になったらどうでしょう。今の倍で攻め込まれたら、地球艦隊が太刀打ちできるとは思えません」
「いや、けどね」太田が言う。「そんなことを言ってたら、いつまでも外へ出ていけないじゃないか。やはりぼく達がするべきなのは、そんな心配よりもイスカンダルへ行けるかどうかで……」
「だが不安にならないのか」南部が言う。「『戻ったときに果たして地球はちゃんとあるか』と案じながら旅はできないだろう。〈スタンレー〉を叩いていけば、後顧(こうこ)の憂(うれ)いを断つことになる」
「そうです」と新見。「これまで地球が押されていたのは、何より敵に冥王星があったからです。冥王星がなければ敵は総攻撃をかけようにもかけられず、また外から新たに倍の艦隊を送ってくることもできない。と、そのように分析されています。〈スタンレー〉さえ潰してしまえば、今後はまた別の準惑星などに基地を建設させるようなこともない。ゆえに〈ヤマト〉は安心してイスカンダルへの旅に出て行けるのです」
「しかしだな、現実にどうすると言うんだ」島が言った。「もう一度言わせてもらうが、無理だろう。この〈ヤマト〉一隻だけで、波動砲を使わずに、百の敵とどう戦うと言うんだ。基地の位置がどこにあるかもわからないんだろ」
新見が言った。「それなんですが……」
作品名:敵中横断二九六千光年2 ゴルディオンの結び目 作家名:島田信之