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敵中横断二九六千光年2 ゴルディオンの結び目

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狂っているのは、しかし地球の軍人も同じ。みんな奇跡を当て込んでいる――スロットマシンでジャックポットが出せると信じて、遣っちゃいけないカネを最後の一円までつぎ込むように。どうせ市民の税金だ。遣った分は他人の負債。獲った分はオレのもの……元々そんな人間でなきゃ、権力なんて求めはしない。今の政府要人が何を考えているかなど、気づいてみればバカバカしいほど簡単だった。

お偉方はいま奇跡を信じているのだ。だから〈ヤマト〉が波動砲を撃つなどと市民に発表してしまった――そういうことだと古代にもわかった。〈ヤマト〉に積んだ波動砲。今になって『撃てません』では自分達の立場がない。だから撃つ。撃ってくれる。〈ヤマト〉が撃てばきっと奇跡が起きるだろう。どんな奇跡か知らないけれど、それでボク達、正しかったということになってくれるだろう。コスモクリーナーなんかなくても、放射能が消えて自然が戻るのだ。やった、地球は救われたぞ! さらば〈ヤマト〉よ、ありがとう! 地球のために死ねてさぞかし本望だろう。ボクらは決して君達の尊い犠牲を忘れないよ。だから成仏してくれよな!

それが〈偉い〉人間てものか。兵隊などは自分の盾で死んで当然、まして戦闘機パイロットなど――古代は自分の前に立つ者達を見た。タイガー乗りのトップガンなら、皆、これまでに多くの死を見てきたはずだ。特攻同然のカミカゼ部隊を援護する任を負って飛び、要人を乗せた船の護衛で身を盾にさせられてきた。おれはがんもどきだったから、そんな世界と無縁だったが……。

古代は思った。兵士であって兵士でない。おれはがんもどきだった。部下を持たない名ばかり士官の荷物運びで、軍にいながらずっと適当にやってきた。いずれ自分も放射能で死ぬとわかってもいたけれど、あまり考えないようにしていた。ひょっとしたら誰かがなんとかしてくれるかもしれないのだし、などとぼんやり考えていて。上では〈偉い〉人間が、ものをしっかり考えているんだろうから……。

その間、この者達は命を懸けて戦ってきたのだ。本当に偉い人間はこいつらだ。なのにどうだ。おれ自身が〈偉い〉人間になってしまった。地球に降りたあのときに――〈サーシャのカプセル〉を運んできたという理由でおれ自身が〈最重要人物〉になってしまい、タイガー隊員が代わりにタマを受けてでも、本当の隊長のように敵に体当たりかけてでもおれを護らねばならないようにしてしまった。そうして、おれの目の前で、沖縄の基地が吹き飛んだ。

それも〈偉い〉人間達が、カプセルと千の命を秤にかけてカプセルの方を選んだからだ。

古代は自分の〈部下〉であるひとりひとりの顔を見た。この中に、あのとき〈タイガー〉のキャノピーを開けておれに拳銃を向けながら、『皆が死んだのはお前のせいだ』と叫んだ者がいるはずだ。ヘルメットのバイザーで顔など見えはしなかったが……。

それはこの中の誰だろう。別に突き止めたくもないが……どうせ全員、考えは同じなのだろうし。

そして、今も考えている。おれを見て、なんでこんなのが隊長なのかと。

しかしそれはこっちが聞きたい。なんでおれがこの者達より〈偉い〉人間ということになるんだ。おれなんか何をどう考えたって、シカトを受けて当然の身なのに……。

「隊長、どうするんです」加藤が言った。「あなたが指揮官だと言うなら、どうすべきか考えてください。くだらんエリートの盾になっておれ達全員犬死にするか。それとも他に考えがあるか?」