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敵中横断二九六千光年2 ゴルディオンの結び目

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新見が言った。戦術科の長としての言葉なのは古代にもわかった。おれがダメなら全員が死ぬ。地球人類が死ぬのはもちろん、〈ヤマト〉の乗組員も皆。それに新見自身もまた……それもわかっているのだろう。これはそういう戦いなのだ。覚悟のうえであなたに賭ける。そう言われている気がした。他になんとも言いようがなく、まさしくそう言うしかないからだとしても……だからおれには無理ですなどと応えられる状況じゃない。

「はい」

と古代は言うしかなかった。そう言うだけで体じゅうの血が引いて、ぶっ倒れそうな思いだった。

「航空隊が基地を探す間、〈ヤマト〉は白夜圏の外で待ちます」と新見は続けて言った。「しかし当然、敵も黙ってはいないでしょう。必ず〈ヤマト〉を沈めようとかかってきます。そのために多くを逃がして我々を待ち受ける手を取ったのですから」

敵は〈ヤマト〉を『来るなら来い』と誘っている。そのためにわざと防備を手薄にしたとの話は、古代もすでに聞いていた。この挑戦は受けるしかない。どちらにとってもこれは決戦なのだから、と――〈ヤマト〉を止めようとするならば敵もリスクを冒さねばならない。まあそういうものと言うのはわかるが……。

「敵にとって、冥王星の基地はもはや犠牲にしてもよいものになったと見るべきです」新見は言う。「今から遊星を止めたところで、地下都市の水の汚染は止まりません。これで〈ヤマト〉が沈んだら、人類滅亡は完全に確定する。ですからもうガミラスにとって、基地はどうしても必要なものではなくなっているのです。航空隊の核攻撃阻止は二の次。あくまで〈ヤマト〉を沈めることを第一に狙ってくるでしょう。おそらく大型艦数隻で〈ヤマト〉を囲もうとすると考えられます」

〈ヤマト〉が沈めば、たとえおれがうまくやってもすべてご破算というわけだ――古代は思った。かえって少し気が楽というのも妙な話だが、心境としてはそうだった。敵が待つのがおれじゃなく船の方だというだけで負担が軽くなる気がする。作戦が成功する見込みは、さらに低まっていると言うのに。

「〈ヤマト〉は十のガミラス艦と戦えるように造られたとされますが、同サイズの大型艦が相手となれば、一度に対せるのは三隻が限度というところでしょう。敵もそう見込んでいて、五隻六隻で囲み込もうとするはずです。まともにやったらやはり〈ヤマト〉は勝てません。主砲とエンジンが焼き付いたらおしまいとわかっているわけですから、できる限り過熱を抑える戦い方が必要です。火力と速度に任せて敵を打ち負かすのでなく、航空隊が任務を果たすまで船を持ちこたえさせるのを第一の旨とする。何よりこれができるかどうかに、作戦の成否が懸かっていると言えます」

つまりは、操舵士の島がどれだけうまく船を操れるかどうか――そういうことだなと古代は思った。島を見る。新見の話を堅い表情で聞いている。おれと同じか、ひょっとするとおれより重い荷を負わされた男の顔だと思った。とは言っても、結局おれに全部懸かってしまってるのかもしれないが。

〈ヤマト〉と島が耐え凌げる間におれが、基地を見つけて攻撃掛けなければならない。そういう話でもあるのだから……島もこちらを見返してくる。頼むぞ、という表情に、古代は頷いてみせた。おれとお前のどちらがダメでも人類は滅ぶ。そういうことだ。頼むから頑張ってくれ――そんなふうに眼で告げてくるその相手が、かつての候補生仲間の島であると言うだけが、この状況で救いだと感じた。てんで知らない人間とどうして命を預け合えるか。

「それから、もうひとつ懸念があります」新見は言う。「敵は必ず、地球の戦艦が来るのに備えて、対艦ビーム砲台をどこかに持っているはずです」

島が言う。「ビーム砲台?」

「はい。おそらくそれこそが、敵が〈ヤマト〉に決戦を挑んでくる理由でしょう。宇宙軍艦を沈めるのに最も有効な兵器は対艦ビームです。〈スタンレー〉には必ず強力な砲台がある。それで〈ヤマト〉を貫けるという自信があるから我々を呼べる。ですからこれが、〈ヤマト〉に対し敵が仕掛ける最大の罠となるでしょう。勝つためにはどのようにして敵がこの〈ヤマト〉を狙うか見極めねばなりません」