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【APH】桜咲 君麗

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桜の花がちらちらと咲き始めた。
日本は47都道府県を巡っていた。
天気が悪くも、桜の美しさに見惚れ、ゆっくりと桜並木を歩いていた。
趣があると感じながら日本は桜を見続けた。

桜が満開になる頃、日本は富士山と共に並ぶ桜の木下に居た。
「やはり桜は美しいですね・・・。」
小声で日本が呟くと、桜と同じ色の服に、日本と同じ黒髪に桜に似せた髪飾りを付けた少女を見つける。
少女は桜の木に隠れ、じっと日本のことを見つめる。
「・・台湾さん?」
桜の幹に近づき、日本は彼女の名を呼ぶ。
彼女の頬は桜のようなピンク色の頬をしていた。
その姿を見て、日本は微笑む。
「こちらにいらっしゃってたんですか。・・また中国さんから逃げ出したのですか?」
少しばかり背の低い台湾の髪を撫でる。
ぷぅと頬を膨らませて台湾はそっぽを向く。
その姿がとてもかわいらしく、日本は微笑みながら台湾を見つめる。
「・・そうじゃなくて・・・・日本さんちの桜見に来たんです。」
風に吹かれてゆらゆらと動く桜の木の枝を台湾は上を向いて見つめる。
「ありがとうございます。今は満開ですので一番綺麗ですよ。」
日本も台湾と同じように桜を見る。


我はいかにしても彼女親戚の娘のごとく布か見えず、と日本は彼女見つめ思ふ。


「いいんですか?お邪魔しても・・・?」
日本は富士山と桜が綺麗に見える別荘に台湾を呼ぶ。
障子を開くと大きな窓が外の風景を美しく魅せつける。
部屋はとても綺麗で、畳の香りが二人の鼻をかすめた。
「いいですよ、そこに座っていて下さい。すぐに粗茶を用意させて頂きます。」
日本は湯を沸かし、急須に茶葉を入れる。
台湾は座布団に座り、外の風景を見つめる。
少し寂しそうな台湾の目を日本がちらりと見る。
台湾は日本に会うと時折その表情をする、その姿に日本は何か申し訳ないような気持ちになる。
しかし彼女は自分が目を離していると思っているときにその表情をする、日本はもしかしたら見られたくないのかもしれない、と思いその表情についてを聞くのを自重していた。

台湾は日本のその優しさには幸せを感じていた、しかしその優しさは恋人に見せる優しさではなく、まるで親戚の娘に対する優しさに見えてしまうことに寂しさを感じていた。
日本と台湾は恋人関係ではない、しかし台湾は日本に恋をしている。
自分のことを支配したというのに、助けてくれたり、先生に会えなく寂しい時もおろおろしながら自分を抱きしめてくれるその優しさが台湾は大好きだった。
当時の優しさも今の日本の優しさも似たものだったが、台湾はもっと恋人らしい優しさが欲しかった。

情けない、日本の頭の中には台湾を見ているとその言葉が出てくる。
自分は彼女のことが大好きである。彼女を見ていると和み、とても楽しい。
時折見せる思い耽る彼女の姿も麗しく、胸を高鳴らせることもあった。
前者は愛らしい、という恋とはかけ離れる気持ちではあるが、後者は明らかに恋心そのものであると日本は認識していた。
そうは分かっていても、日本は自分は爺さんで彼女の恋人なんて遠い存在だと思っていた。
彼女にとっては単なる親戚の爺さん程度にしか見えないのではないか、その不安と弱さが日本の頭の中に「情けない」という言葉を出すのであった。

「粗茶ですがどうぞ。」
自分の茶と彼女の茶を出し、日本は台湾の前の座布団に座る。
「ありがとうございます。」
ニコリと笑うその姿に日本はドキリと胸が高鳴るのが分かった。
それが恋だということは知っていた、しかし自分と台湾は不釣合いである・・・日本はそう自分の中で定義を構成していた。
「・・・日本さん、顔赤いですけど・・・熱でもあるんですか?」
首をすこし傾げ台湾は日本に顔を向ける。
「い、いえ・・・。少し茶を淹れている時に熱くなって・・・。」
その言い訳は偽りである、本当は彼女のその麗しい姿の虜になっていたからである。

茶を一口飲むと、口内に甘味がする、今日の茶はやぶきたである。
彼女は渋味のある茶よりも甘味のする茶のほうが好きだと日本は配慮してやぶきたを選んだ。

「・・・日本さん。」
真っ直ぐな目で台湾は日本を見つめる。
「・・・・・・・とっても、桜、綺麗ですよね。」
桜を見つめ、台湾は横目で日本を見る。
「―そうですね。」
桜を見つめ、日本はそう言い返す。
その質素な会話は変わらないいつもの会話。
飽き足らず趣を感じるのは互いに好きなことである、しかしそればかりではつまらない。
あなたはどんなことが好きなの?嫌いなものは?
そこから始まってもっと世界を広げたい。
でも、そんなことを気軽に話せる訳ではない。
二人にとってにとって互いは同い年のような存在ではない。
そんな趣を感じる話題しかできないのが辛くて仕方がなかった。

台湾はふとその現実が辛くなった。
正面に大好きな日本が居るというのに、愛し合うことはできない。

「なっ、ど、どうしましたか!?台湾さん?」
あわあわと日本は立ち上がり、台湾の隣に来る。
台湾はぼろぼろと涙を流し、自分でも知らぬ間に涙を流していた。
日本が近くに来ることによって台湾はもっと胸が苦しくなり、手で目を覆い涙を流す。

日本は無意識に彼女を抱きしめる。
「・・・!」
手で覆っていた目を丸くして日本の胸の中に居ることを確認する。
「・・・・どうしたんですか、何処か痛いのですか?・・それとも・・私に関して何か悩みでも?」
ああ、わかってる、日本さんは私が悩んでいることを知っている、台湾はそう考え、日本に呟く。
「・・・日本さんはっ・・・・・・私のこと、どう思ってますか・・・・・。」
思い切って台湾は日本に問う。
まずは、ここから。
そんなの当然の返答が帰ってくる。台湾はそう思っていた。
娘とか、孫とか・・・そんな存在でしかないと思っていた。

「・・・私は・・・・台湾さんのこと・・・・・・・・好きだと思っていますよ。・・・」

(その答えの後はきっと・・・・)

「・・・・恋している相手として・・・・・・。」



ああ、思い切って言ってしまった。
日本は顔を真っ赤にする。
こんなに甘い言葉、自分には合わない。幾つだと思っているんだ。
「・・・台湾さんは・・・・・?」
勝手に言葉が漏れ、日本は台湾の瞳の奥を見つめる。
涙を流しながら台湾は笑って言う。
「・・・大好きです!日本さんのこと・・大好きです・・・・!・・・・・・・好きな人ですから・・・!」
彼女の瞳から流れる涙は悲しみの涙ではない、喜びの涙。

一段落して、茶を飲み終え、日本は台湾に手を差し出す。
「行きましょう。・・桜を見に。」
台湾はその手を取り、日本と手を繋ぎ、外へと出る。



「日本さん、日本さんは何が好きなの?」

「そうですねー・・・漫画に桜に・・・・・あと・・・」

「あと?」

「った・・・・・・・・台湾さん・・・・・です。」

「・・日本さん・・・・。」

互いに頬を染めて握り締める強さが少し強くなる。


柔らかな風で桜の花びらが舞う。





桜の木下で二人は見つめあい、やがて一つになった。













−桜咲きて 君麗しう



作品名:【APH】桜咲 君麗 作家名:Nagi