ガンダム 月の翅
夜明け近く
「これより出航する!我々は今より流浪の民スリチュアンとしてあの遥かな空を漂う事となろう!いつ帰るともわからない長旅になる。その間、よろしく頼みます」
錆色の船体に血脈の如く青い光が隅々まで迸り、ゆっくりと羽を広げるようにその体を天へと近づける。内部は全天周クリアになり、昇る日が眩しかった。
「浮上しました!」
「よし・・・スリチュアン、発進!」
スリチュアンの色が七色に発光し、船体下にリング状の粒子が出現した。
パウッ
大地が遠くなり、景色が丸みを帯びてゆく中、体にかかるGが増していった。
身体がつぶれるのではないか
そう感じ始めた時、重力がフウッと消え、身体が解放された。懐かしいような、温かいような心地よさに包まれると同時に、明るみを帯びていた景色は一気に静寂になった。
「静かだ」
悠久の刻を感じた。母なる大地を離れても、ぬくもりがあった。