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brother's sweets

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ふと懐かしくなる味。
温かい暖炉のある部屋で小さな子供がふたり遊んでいる。
ふと一人が顔をあげ、部屋に入ってきた青年に飛びついた。
もう一人はぬいぐるみを抱いて、青年を笑顔で迎える。
―二人ともいい子にしていたか?
青年が帰ってきた嬉しさに一人の少年はずっと足にしがみついてはなれない。
―今日はおやつを焼こうか








今日は書類を届けることになっていたが、寄り道をしていたらうっかり遅くなってしまった。
玄関の呼び鈴が家中に響き渡り、大きな足音が玄関に近づいてくる。
「マシュー、いいところに来たな。今から珈琲タイムだぞ」
扉から現れたのは自分と同じ顔のアルフレッド。珍しくエプロン姿だ。
「うわーいい香りがするね」
開かれたドアからは香ばしい香りが漂ってくる。
アルフレッドは満面の笑みでマシューを招きいれ、机に座るように案内する。
「さあできたばかりだ、美味しいぞ」
シンプルに盛られたビスケット。

「・・・美味しい」
ほどよい甘さとやわらかさビスケットというよりはスコーンに近い。
「そうだろ。俺が作るお菓子もヒーローだ」
向かい合う同じ顔の青年は満足そうな笑みを浮かべる。
「そうだね。凄く懐かしい味がするよ。昔君と一緒に食べた」
アルフレッドの目じり少し赤くなって上目遣いにマシューを見る。
「これはビスケットだぞ」
「ふふふ、分かってるよ。」
分かってるよ。君がアーサーのスコーンがとても好きなことぐらい。
アーサーのスコーンを真似て君がアメリカで「ビスケット」というお菓子を作ったんだよね。
「僕もビスケット好きだよ」
幼い頃に君と僕とアーサーと、3人で囲んで紅茶とスコーンを机に並べて、
僕たちのためにアーサーはチョコレートやジャムを載せた美味しいスコーンを用意してくれた。
珈琲を一口飲んで
「そうだ、僕はスコーンを作ってきたんだ」
そっとカバンの中から小さな包みを取り出して、アルフレッドが言う「ビスケット」の横にそっと並べる。
メープルの香りがふんわりするスコーン。
一瞬あっけにとられた顔をしてふふふとアルフレッドが笑う。
「面白いな俺たち」
「そうだね、アルも同じ夢を見たの?」
暖炉の前で遊ぶ二人。
アーサーが帰ってきて飛びついていくアルフレッドとクマのぬいぐるみを
抱きしめて迎えるマシュー。
「俺が君のスコーンを横取りするんだろう」
焼いてくれたスコーンが美味しくて、マシューが大事にゆっくり食べていたスコーンを横取りしてしまう。
「それで僕が泣き出して、君がアーサーに怒られるんだ」
スコーンを取られて泣き出すマシューをなだめながら、悪いことをしたアルフレッドが怒られる。
「そして二人で泣き出すんだよな。アーサーが俺たちを抱きしめるんだ」
自分のスコーンを半分ずつアルフレッドとマシューに分けてあげる。
今はお互いに離れてしまったけど幸せな時もあった。
大人になって、素直に甘えることも頼ることもできない。もうあの頃には戻れないけれど。
アルフレッドは目を細めて微笑みながら少なくなったカップの珈琲を見る。
「次は紅茶を淹れようか?いいのがあるんだ君のスコーンに合うだろう」
「嬉しいな。僕は君の淹れる紅茶も好きだよ」
アルフレッドが淹れる珈琲も美味しいけれど、紅茶戸棚の中にはファイン・ティッピー・ゴールデン・フラワリー・オレンジ・ペコ
珈琲と同じくらい美味しい紅茶が隠れているのをマシューは知っている。
























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むっつりは菊とルートの専売特許ですが、たまにはツンデレアルにも使ってみたいナ。
いつでも扱いが酷いので不憫じゃないアーサーを目指してみました。でもアーサーの出番がなかったごめん!
カナたんがかわゆす。カナたんとアルは双子なので不思議パワーがあると萌える。
スコーンについて調べていたら「イギリスのプレーンスコーンはアメリカ合衆国でビスケットと呼ばれているものとほぼ同じであるが」
という記述に萌えました。なぬ!スコーン→ビスケットの歴史があるんですね。アルはアーサー大好きジャン!!
母の味が忘れられないように、育ての兄の食事も忘れられないんです。
アーサーのスコーンを目の前に誰も食べてくれなくてもアルが肩をぽんぽんと叩いて
「どれどれ君の化学兵器は僕が処分してあげないとね」とスコーンを食べてあげるんですね。


作品名:brother's sweets 作家名:千秋けん