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マニュアル赤ずきん(前編)

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■配役■
赤ずきん→ルート、お母さん→菊、猟師→フランシス、おばあさん→ギルベルト、狼→フェリシアーノ

***************

おばあさんのところへお使いを頼まれた赤ずきんちゃん
「おばあさんの具合が悪いようです。花と一緒にこれを持っていってあげてください。」
赤ずきんはお母さんから、籠に入ったおばあさんの大好きなヴルストとビールを受け取りました。
「狼が出るから寄り道をしないで行くのですよ」
「あ・・・本田、思うんだが具合の悪いおばあさんに、そのビールを持っていくのか?」
ビールとヴルストはギルベルトの好物だが、これではお見舞いというよりは宴会に近い。
「はい、私は台本どおりにご用意いたしました」
にこりと本田がルートに微笑みかける。
「誰だこの台本作った奴は・・・」
しぶしぶと赤ずきんは歩き出した。
「よ!赤ずき・・・・ぶひゃひゃひゃひゃ!似合いすぎだよお前・・・ひゃひゃひゃ!!」
猟師が赤ずきんに声をかけようとして、腹を抱えて倒れこんだ。
「わ・・・笑うな!!!!」
笑い転げるフランシスに耳まで真っ赤に染まったルートが怒鳴りつける。
「な・・・なんだルート、お前が赤ずきんとは思わなかったよ。よく引き受けたなお兄さんびっくりしたよ」
ひーひーと肩で息をしながら、涙目でルートを見上げるフランシス。
「こんな指令でも途中で投げ出すわけにはいかないからな遂行するまでだ」
「そうか。お前らしいな」
ルートの真面目さにフランシスは感心した。
「あ・・・ともあれ、ここの森の道中はオオカミが出るから、気をつけておばあさんのうちまでいけよ。
お前が赤ずきんなら気をつける必要もないかもしれないが・・・」
「ああ、ありがとう」
籠の中には菊が作成した「赤ずきん行動マニュアル」が入っていた。








「ここを村の子達が通るんだよね。俺悪役だけど楽しみだな。可愛い子だったら嬉しいな」
シエスタが終了したオオカミはうきうきと森で子供が通るのを待ち受けていた。
がさ、と音が鳴り音がした方を見てオオカミは驚愕した。
サイズの合わない服、今にも前ボタンが飛び散りそうな鍛え上げられた胸筋。
籠に通す腕は鍛え上げられて力強く、ミスマッチな光景に目を疑う。
近づいたら殺されそうな禍々しいオーラを放ちながら赤ずきんは歩いていた。
(ヴェェェ〜ルートだよ!凄い怖い顔してるよ!早く近い道して待っとこう)
木の陰からぶるぶる震えながら赤ずきんが道草をしているのを見ていた。

森の中には綺麗な花々が咲き乱れ、木の上にはおいしそうな果実がなり、赤ずきんの心を躍らせた。
(ふむ、赤ずきんはここで忠告を破り、みちくさをするという指令が出ている)
おもむろに赤ずきんはあたりを見回し、森に生えたいたイチゴに目を向けた。
(おお、これはいいクーヘンが作れそうだ、少し摘んでいくか)

「ヴェーギルベルトー!!」
赤ずきんのおばあさんの家に飛び込むオオカミ。
「”うわーオ・・・オオカミ、た、たすけてー”ってゆーかフェリちゃん、何だよ。俺を襲うんじゃなかったのか」
ベットで携帯のブログを更新しながら寝ていたおばあさんの布団にオオカミが飛び掛っていった。
「ヴェ〜、今赤ずきんちゃん見てきたよ。俺すっごい怖かった!!」
「おいおい、赤ずきんが怖いオオカミって何だよ」
ギルベルトに泣きつくフェリ。
「ルートがね、すっごい怖い顔してこっちに向かってるんだ。もうすぐ来ちゃうよ、俺どうしよう」
白旗を掲げながら、ギルベルトに助けを請うフェリ。
「ヴェストが赤ずきんなのか。へぇ、すげえ配役だな。よし、フェリちゃんが人質だ」
「え?」
「俺がオオカミやるぜ。久々にヴェストと腕試ししてやろうじゃねぇか」
おばあさんの緋色の目がきらめく。

コンコン、とおばあさんの家の扉が開く。
「”おばあちゃん、お見舞いにやってきたよ”・・・兄さん?」
「よぉ赤ずきん」
ベットから起きて仁王立ちに立っているギルベルト。
ベットには手足を縛られ、口をふさがれたフェリシアーノがもごもごと動き回っていた。
「フェリシアーノがオオカミ・・・か?兄さんがオオカミを捕まえたのか」
「フェリちゃんが、お前が怖いって言うからな、俺がオオカミ役さ。かかってこいヴェスト」
「ほぉ、兄さんなら手加減不要だな。では相手をしてもらおうか」
籠を置き、顔つきが豹変する。ビリビリと威圧的な空気が貼り、
「おもしれぇ」
ギルベルトがにやりと口端を上げる。