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池袋の表裏

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「静雄じゃねえか」

露西亜寿司のいつものカウンターで食事をしていると後ろから声をかけられた。

「門田…仕事終わりか?」
「おう。隣いいか?」
「ああ」

門田は隣に座ると「おすすめをくれ」と目の前で魚をさばいていた外人に注文をした。
門田京平、平和島静雄とは高校の同窓生といった仲だ。
それだけといったらそれだけなのだが、何故か今でも二人の繋がりが消えることはなかった。

「今日はアイツ等とつるんでないんだな」
「ん、渡草はアイドルの追っかけ。遊馬崎と狩沢は珍しく仕事があるみたいだ」
「アイツ等仕事してたのか?」

目を見開いて本気で驚いた様子の静雄に門田は苦笑した。

「まぁ、フリーターって思われても仕方ないよな。
 …遊馬崎は氷の彫刻、狩沢はアクセサリーを作って売ってる」
「へえ…、職人って感じでいいな。俺もなんか特技がほしいよ」

そう言いながら寿司を口に運び緑茶を啜ってシャリを流し込む。

「特技?なんでまた」
「や、昼にトムさんにも言ったんでだけどよ、ノミ蟲が消えて平和になった
 所で余裕ができてな」
「ああ」
「門田、どんな資格を取った方がいいとかないか?」
「資格?…資格……」

門田は真剣な表情で考え込む。
そして暫くして静雄の方に顔を向けた。

「資格じゃねえけど、運転免許とか取ったらどうだ?」
「運転免許?」
「ああ、移動が相当楽になるぞ」

静雄はうーん、と首を傾げた。

「けど俺、こっからあんま出ようとは思わねぇしなぁ」
「たまに自然の空気が吸いたいとか思ったり」

門田の言葉に静雄は小鳥の囀りを聞きながらうたた寝をする自分、熊と戦う自分を想像する。

「それはある」
「…今俺が言った自然とお前が想像した自然に相違が生じた気がした」

門田の呟きには触れず静雄は話を進める。

「だけどよ、中古でも何十万払って買った車をすぐ壊しちまいそうな気がして。
 それに、免許が取れる気がしねえ。運転免許って取るのに何日もかかるんだ
 ろ?無理だ」
 
門田は苦々しい顔をして次の言葉を絞り出す。


「…それは、ううん…。…すまん」
「なんで謝んだよ。つか、門田は免許持ってんのか??いつもあの…誰だ?
 アイツが運転してるだろ」
「渡草か」
「そう、ソイツだ」
「前に一回だけ取りに行こうと思った時がある。知ってる通りいつも渡草に運転
 させて悪いと思ったしな。けどその話をアイツにした瞬間「門田の馬鹿野郎!」
 って走り去っていったから、何か、やめた」
「門田が運転出来るようになったら立場なくなっちまうもんな」
「ええ?そうか?」

門田は適温になった緑茶を飲み咥内を潤した。
それから二人は刺身が乾いてしまわないように話を続けることはせず、食べることに専念した。


「門田」

暫くすると静雄が口を開いた。

「ん?」
「これからどっか行こうぜ」

突然の静雄の提案に門田は目を丸くしたが、すぐに口元に笑みを浮かばせた。

「これからって、もう10時近くだぞ?」

確かめるような門田の言葉に静雄はニヤリと、まさしくそんな効果音がつきそうな笑顔を向けた

「なに、まだこの街は眠らねえよ」
作品名:池袋の表裏 作家名:hathuko