Break Out!!
「? 何だ、これ?」
早田の家に遊びに来た反町は、居間のフローリングに置かれた箱に目を留めた。
「ああ、こないだ従兄弟連中が遊びに来た時に、やるゆーて置いて行ったんや。何や、ゲームらしいで」
見ると、沢山のフィギュアとサイコロ、それに説明書が入っている。
説明書の表紙には『BATTLE BREAK』の文字。パラパラとページをめくり、ルールを読む。どうやら、チェスや将棋のように盤上で戦うゲームらしい。
チェスや将棋ならやったことはある。
「ふーん。早田はルールわかるのか?」
「そら、こないだ散々対戦させられたからな」
「ちょっと、やってみようぜ」
反町がニヤッと笑い、フィギュアを選び始める。
「ええけど、っと、こっちは俺のデッキやからな」
早田は慌てて赤と緑の台座のフィギュアを10個取る。
反町はルールブックや台座に書かれた文字とにらめっこをしながら、黄色と青の台座のフィギュアから10個を選んだ。
「じゃんけんで先攻と後攻を決めて、掛け声で始めるらしいで」
言われてルールブックを見ると、確かにそのように書いてある。
じゃんけんは反町の勝ち。ゆえに、反町が先攻となった。
「じゃあ……」
「「ブレイクアウト!」」
ゲームスタートである。まず、反町が黄色のコインを2枚、更に青のコインを1枚取る。
「んじゃあ、まずはこの、ワンオブナインとかいうやつで」
大きな手裏剣を背負った女性型のフィギュアにコインを2枚重ねて3マス動かした。
「ターンエンドやな。じゃあ、俺はコイン3枚使って、この、ケルベロスを」
早田は三つ首の青い怪物を出し、2マス進めた。
反町は青いコインを更に1枚取り、ワンオブナインを3マス進め、コインが4枚積まれた『城』の前に移動させると、ニィッと笑った。
「じゃあ、攻撃な。ワンオブナインで城を破壊」
反町はそう言うと、文字と数字の書かれた水色のサイコロを振った。サイコロはコロコロと音を立てて転がると『0』の目で止まった。
「『絶対失敗』以外は成功だよな? ほい、成功~」
反町が楽しそうに言うと、早田は「見とれよ」と言いながら城のコインをめくった。裏には『反撃2』の文字。早田はニィッと笑い返すと、ワンオブナインを盤上から除けた。
「『反撃2』やから、こいつはサイナラや」
「ああっ!」
今度は反町が歯噛みする。
早田はケルベロスに始まり、ヒナモグで反町の城を割り、甲蟲王を出撃。
対する反町は、城コインは『退去』だったがヒナモグは移動させずクリオで撃墜、高速移動のアビリティーDEXで2枚目の城を割るも、ケルベロスの3連撃で絶対成功を食らい撃沈、更に斜め移動のウィンドリアンを出撃させる。
主に反町が城を攻め、早田が反町のフィギュアを撃墜する、という攻防が続いた。
反町が早田の城をあと1枚というところまで追い込むが、早田が出したピーコック・ペガサスに阻まれ、膠着状態に陥った。
早田の城の周りには、早田のピーコック・ペガサス、反町とパワーローダー・クシナダと色欲のルクスリア。
そのクシナダも、早田が出撃させたメデュー・チャンの『絶対成功』からのコイン効果『イージス・ブレイク』によって破壊されるが、反町も負けじとルクスリアの『絶対成功』によってメデュー・チャンを破壊。
「ちっきしょー、こいつ邪魔だなー」
反町はペガサスを指で弾き、そのたて髪をなびかせた美しい造型に、心の中で「若島津みてー」と、少し思う。
「ヒヒッ。まだまだ、これからや、ほりゃっ」
早田はそう言うと、大きく翼を広げた鳥をルクスリアの前に出した。不死フェニックス、レベル6、飛行3、ダメージ2の強力フィギュアだ。
早田はフェニックスのコインを1枚減らし、ルクスリアの頭上にかざして元の位置に戻す。コイン効果の『フレイム・ウィング』だ。だが、
「ふふん。ルクスリアは攻撃自動効果無効の上にコイン効果で相手のコイン効果をむこうに出来るんだもんねー」
反町は余裕の表情で言う。
「いやいや、わからんで。まあ、コイン効果不発はしゃーない。んでも、絶対成功が出れば2ダメや」
早田が言ってサイコロを振るも、出目はマイナス1、1ダメージ止まりだった。
反町のターン、貯まったコインで斜め移動、飛行3のトリヤマロボを出撃させつつ、ルクスリアでフェニックスを攻撃し、どうにか2ダメージを与える。
「さて、ここでもっかいコイン効果や」
早田がコインを1枚減らし、またもやルクスリアの頭上にフェニックスをかざす。
「だーから、無駄だって。はい、コイン効果『色欲』ね」
反町がルクスリアのコイン効果を発動した瞬間、
「ひゃひゃひゃ! 掛かったな! ここで通常攻撃! ほれ、成功、1ダメや!」
「ああああ!!」
ルクスリアのレベルは4、すなわち、コイン効果2回でコインを2枚消費に加えて、1ダメージを2回、見事に撃沈であった。
「反町、お前の攻撃は、そないなとこが甘いねん」
「ちっくしょ~」
反町にはトリヤマロボがいるが、城に届く位置にはフェニックスが、もう片側にはペガサスがいるため、直接攻撃は出来ない。
反町は念のため、傲慢のスペルビアを出撃させつつ、トリヤマロボでペガサスを狙い、何とか2ダメージを与えた。
「ほな、俺も攻撃や」
早田はペガサスでトリヤマロボを攻撃する。が、出目は無情にも『絶対失敗』だった。
「ありゃ、失敗や」
反町はスペルビアを進めるも、ペガサスにはまだ届かない。トリヤマロボで再びペガサスを攻撃する。
「っしゃー!!」
出目は『絶対成功』、反町は思わずガッツポーズを取る。
「カーッ! これはちぃと痛いなぁ……しゃーない、ここはこいつや!」
早田はコインを1枚、2枚、と7枚まで重ねると、トリヤマロボの横に赤い髪を逆立て、青い剣を振りかざす獅子のフィギュアを置き、ニィッと笑った。
「レベル7獅子王や……が、その前に、っと」
獅子王をそのままに、スペルビア避けであろう、まずはフェニックスを城の真正面に移動させ、スペルビアを攻撃する。出目はマイナス2、攻撃通らず。だが、反町は、
「あっ、ちきしょー、もう少しだったのに!」
「まだまだ、本番はここからや。コイン効果『獅子王剣』や!!」
早田は叫ぶと、獅子王の台座からコインを6枚除いた。
「な、なにぃ!? 6枚って何だよ!?」
「この獅子王のコイン効果はな、使ったコインの枚数分、ダメージを与えられるんや」
「……ってことは」
「トリヤマロボに6ダメ、ほれ、どかしーや」
「っんだよ、それ! きったねー!!」
「勝負とは非情なもんや。ほれ、反町の番やで」
「わーってるよ! スペルビアを2マス移動して、フェニックスを攻撃! 3連撃だぜ!!」
サイコロに念を込めつつ、一気に振る。1回目、0で失敗。2回目、プラス1で成功、1ダメージ。3回目……絶対成功!
「っしゃー!! コイン効果『真クレセント斬り』!!」
「あららー、やられてもーた。ほな、『復活』」
「……は?」
盤上からフェニックスを除いた直後、コイン3枚を付けて出撃マスに再び置き直す早田に、反町の目が点になる。
「不死フェニックスはブレイクされてもコイン3枚付けて復活させることが出来るんや」
早田の家に遊びに来た反町は、居間のフローリングに置かれた箱に目を留めた。
「ああ、こないだ従兄弟連中が遊びに来た時に、やるゆーて置いて行ったんや。何や、ゲームらしいで」
見ると、沢山のフィギュアとサイコロ、それに説明書が入っている。
説明書の表紙には『BATTLE BREAK』の文字。パラパラとページをめくり、ルールを読む。どうやら、チェスや将棋のように盤上で戦うゲームらしい。
チェスや将棋ならやったことはある。
「ふーん。早田はルールわかるのか?」
「そら、こないだ散々対戦させられたからな」
「ちょっと、やってみようぜ」
反町がニヤッと笑い、フィギュアを選び始める。
「ええけど、っと、こっちは俺のデッキやからな」
早田は慌てて赤と緑の台座のフィギュアを10個取る。
反町はルールブックや台座に書かれた文字とにらめっこをしながら、黄色と青の台座のフィギュアから10個を選んだ。
「じゃんけんで先攻と後攻を決めて、掛け声で始めるらしいで」
言われてルールブックを見ると、確かにそのように書いてある。
じゃんけんは反町の勝ち。ゆえに、反町が先攻となった。
「じゃあ……」
「「ブレイクアウト!」」
ゲームスタートである。まず、反町が黄色のコインを2枚、更に青のコインを1枚取る。
「んじゃあ、まずはこの、ワンオブナインとかいうやつで」
大きな手裏剣を背負った女性型のフィギュアにコインを2枚重ねて3マス動かした。
「ターンエンドやな。じゃあ、俺はコイン3枚使って、この、ケルベロスを」
早田は三つ首の青い怪物を出し、2マス進めた。
反町は青いコインを更に1枚取り、ワンオブナインを3マス進め、コインが4枚積まれた『城』の前に移動させると、ニィッと笑った。
「じゃあ、攻撃な。ワンオブナインで城を破壊」
反町はそう言うと、文字と数字の書かれた水色のサイコロを振った。サイコロはコロコロと音を立てて転がると『0』の目で止まった。
「『絶対失敗』以外は成功だよな? ほい、成功~」
反町が楽しそうに言うと、早田は「見とれよ」と言いながら城のコインをめくった。裏には『反撃2』の文字。早田はニィッと笑い返すと、ワンオブナインを盤上から除けた。
「『反撃2』やから、こいつはサイナラや」
「ああっ!」
今度は反町が歯噛みする。
早田はケルベロスに始まり、ヒナモグで反町の城を割り、甲蟲王を出撃。
対する反町は、城コインは『退去』だったがヒナモグは移動させずクリオで撃墜、高速移動のアビリティーDEXで2枚目の城を割るも、ケルベロスの3連撃で絶対成功を食らい撃沈、更に斜め移動のウィンドリアンを出撃させる。
主に反町が城を攻め、早田が反町のフィギュアを撃墜する、という攻防が続いた。
反町が早田の城をあと1枚というところまで追い込むが、早田が出したピーコック・ペガサスに阻まれ、膠着状態に陥った。
早田の城の周りには、早田のピーコック・ペガサス、反町とパワーローダー・クシナダと色欲のルクスリア。
そのクシナダも、早田が出撃させたメデュー・チャンの『絶対成功』からのコイン効果『イージス・ブレイク』によって破壊されるが、反町も負けじとルクスリアの『絶対成功』によってメデュー・チャンを破壊。
「ちっきしょー、こいつ邪魔だなー」
反町はペガサスを指で弾き、そのたて髪をなびかせた美しい造型に、心の中で「若島津みてー」と、少し思う。
「ヒヒッ。まだまだ、これからや、ほりゃっ」
早田はそう言うと、大きく翼を広げた鳥をルクスリアの前に出した。不死フェニックス、レベル6、飛行3、ダメージ2の強力フィギュアだ。
早田はフェニックスのコインを1枚減らし、ルクスリアの頭上にかざして元の位置に戻す。コイン効果の『フレイム・ウィング』だ。だが、
「ふふん。ルクスリアは攻撃自動効果無効の上にコイン効果で相手のコイン効果をむこうに出来るんだもんねー」
反町は余裕の表情で言う。
「いやいや、わからんで。まあ、コイン効果不発はしゃーない。んでも、絶対成功が出れば2ダメや」
早田が言ってサイコロを振るも、出目はマイナス1、1ダメージ止まりだった。
反町のターン、貯まったコインで斜め移動、飛行3のトリヤマロボを出撃させつつ、ルクスリアでフェニックスを攻撃し、どうにか2ダメージを与える。
「さて、ここでもっかいコイン効果や」
早田がコインを1枚減らし、またもやルクスリアの頭上にフェニックスをかざす。
「だーから、無駄だって。はい、コイン効果『色欲』ね」
反町がルクスリアのコイン効果を発動した瞬間、
「ひゃひゃひゃ! 掛かったな! ここで通常攻撃! ほれ、成功、1ダメや!」
「ああああ!!」
ルクスリアのレベルは4、すなわち、コイン効果2回でコインを2枚消費に加えて、1ダメージを2回、見事に撃沈であった。
「反町、お前の攻撃は、そないなとこが甘いねん」
「ちっくしょ~」
反町にはトリヤマロボがいるが、城に届く位置にはフェニックスが、もう片側にはペガサスがいるため、直接攻撃は出来ない。
反町は念のため、傲慢のスペルビアを出撃させつつ、トリヤマロボでペガサスを狙い、何とか2ダメージを与えた。
「ほな、俺も攻撃や」
早田はペガサスでトリヤマロボを攻撃する。が、出目は無情にも『絶対失敗』だった。
「ありゃ、失敗や」
反町はスペルビアを進めるも、ペガサスにはまだ届かない。トリヤマロボで再びペガサスを攻撃する。
「っしゃー!!」
出目は『絶対成功』、反町は思わずガッツポーズを取る。
「カーッ! これはちぃと痛いなぁ……しゃーない、ここはこいつや!」
早田はコインを1枚、2枚、と7枚まで重ねると、トリヤマロボの横に赤い髪を逆立て、青い剣を振りかざす獅子のフィギュアを置き、ニィッと笑った。
「レベル7獅子王や……が、その前に、っと」
獅子王をそのままに、スペルビア避けであろう、まずはフェニックスを城の真正面に移動させ、スペルビアを攻撃する。出目はマイナス2、攻撃通らず。だが、反町は、
「あっ、ちきしょー、もう少しだったのに!」
「まだまだ、本番はここからや。コイン効果『獅子王剣』や!!」
早田は叫ぶと、獅子王の台座からコインを6枚除いた。
「な、なにぃ!? 6枚って何だよ!?」
「この獅子王のコイン効果はな、使ったコインの枚数分、ダメージを与えられるんや」
「……ってことは」
「トリヤマロボに6ダメ、ほれ、どかしーや」
「っんだよ、それ! きったねー!!」
「勝負とは非情なもんや。ほれ、反町の番やで」
「わーってるよ! スペルビアを2マス移動して、フェニックスを攻撃! 3連撃だぜ!!」
サイコロに念を込めつつ、一気に振る。1回目、0で失敗。2回目、プラス1で成功、1ダメージ。3回目……絶対成功!
「っしゃー!! コイン効果『真クレセント斬り』!!」
「あららー、やられてもーた。ほな、『復活』」
「……は?」
盤上からフェニックスを除いた直後、コイン3枚を付けて出撃マスに再び置き直す早田に、反町の目が点になる。
「不死フェニックスはブレイクされてもコイン3枚付けて復活させることが出来るんや」
作品名:Break Out!! 作家名:坂本 晶