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あなたのためなら死んでもいいわ

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「えーと、首を絞める」
「毒を盛る」
「鈍器で殴る」
「どこを?」
「そりゃ頭だろ、普通」
「顎でもいいんじゃね?」
「…鈍器を振り上げるくらいなら、振り下ろせよ。大変だろが」
「あー、まあ、そおか。次俺の番?」
「お前」
「突き落とす」
「どこからだよ」
「高いところから」
「お前それ、まず相手が高いとこに行かなきゃいけねーじゃねえか。ナシだそんなん、却下」
 屋根の上に陣取って、まさしく『高いところ』にいる相手にそんなこと言われてもなあと思いながら、俺は酒瓶を傾けた。突き落としてやろうかな。でも二階じゃ死ねねえか。
 夜とはいえ軽く汗ばむような熱気がアスファルトから漂ってはいたけれど、屋根の上まではその猛威は届かない。かぶき町のネオンは十分に明るく、頭の上の星を打ち負かしながら俺の手元を照らした。
「別にいーじゃん。条件は斬らないことだけだろ」
「まぁな」
「じゃ、次多串君」
「あー…」
「降参?」
「アホか、誰がだ。水につける」
「おー、溺死」
「すごいらしいぜ。膨れて」
「俺見た事あるもん」
「どこで」
「ちっさい頃」
 ふうん、と興味なさげに土方は頷き、それ以上は追求してこなかった。俺の小さい頃の話を土方が聞く時は俺たちが二度と会わない時だと、多分お互い知っているからだ。
 明日か十年後か知らない。ただ、今夜じゃない。それはまだ。
「次、お前だぞ天パ」
「押し潰す」
「圧死か。んじゃ俺、轢死」
「おお、出た」
「お前見た事あるか?」
「俺、ない」
「俺あるぜ。真選組の任務ん時」
「どうだった?」
「フツー」
「挽肉?」
「まぁな。おら、次」
 大体もう出たんじゃないかぁと俺は思って、ほんとに、刀使わないで人が死ぬ方法なんていくらでもある。奪われた寿命は星にもならずに地面にはただ血が染み込んで、俺たちはこんなと
ころでそれ使って山手線ゲーム。バチ当たりとでも何とでも呼べ。
「もうないよー?」
「んじゃてめーの負けだ」
 こんなくだらない些細なことでも勝たないと気が済まない土方は、気持ちよさそうに酒瓶を傾けた。俺は負けるのが嫌いじゃない。それは俺が負けると土方が機嫌良さそうにするからなんだけど、俺いつかこいつの嬉しそうな顔見るために自害とかすんじゃねーかな、大丈夫かな。
 おまけに、一個思いついちまったよ。あーあ、自害はまだ先。
「土方ぁ」
「ん」
「俺の勝ち」
「ああ?」
「思いついちゃった」
「何だよ」
 怪訝そうな土方の顔を見ながらうひひ、と笑って、俺は一言。
「腹上死」
 そんな嫌そうな顔しないでよ愛しの副長そしたらさせて上げないこともねえよ俺の上で腹上死。