二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

らいにる ひよこまんじゅう

INDEX|1ページ/1ページ|

 
知り合いに貰ったんだ、と、兄が持ち帰ったのは、まんじゅうだった。まんじゅうはいいのだ、まんじゅうは。それは、ひよこの形をした可愛いまんじゅうだったのだ。包みの上からでも、ひよこのフォルムが解る。ちょうど、手のひらに収まるサイズだ。

 コーヒーでいいか、と、準備を始めたニールは、調子の外れた鼻歌を、ふんふんと口ずさんでいる。

・・・これ、顔もあるんだ・・・・・

 包装紙を外すと、可愛いひよこの形のまんじゅうが出てきた。ちゃんと、つぶらな瞳まである。非常に食べにくいものだ。

・・・・さすがに頭からは・・・なあ・・・・

 頭をカプッと齧るのは、気が引ける。半分に割るのも、なんだか、惨い気がする。無難に尻尾あたりからだろうか、と、手にして尻尾あたりを眺めていたら、コーヒーが届いた。コトリとテーブルに湯気の上がったマグカップだ。それを契機にして、まんじゅうを開いた包装紙の上に着地させた。
「・・・・どっか出張してたらしい。それで、俺が甘いもの好きだからってさ。」
「あんた、いつか刺されるぜ? 」
「どうして? 」
「誰彼構わず、色目を使うなって言ってんの。」
「使ってねぇーよ。人を、たらしみたいに言うな。」
「はあ? どっかの軍人とか、どっかの傭兵とか、どっかの子供とか、どっかの超兵とか、どっかの教官とか・・・あんた、どんだけ、たらしてるか自覚してるか? 」
 兄当人には自覚はない。ただ、スキンシップ過多だと思っているが、やられる相手は、きっちりと兄に惚れる。今まで、兄が襲われないのは、その全員が牽制しあっているからのことで、どこかで誰かの箍が外れたら、兄は食われるだろう。自業自得だから、俺は注意するだけだ。まあ、そうなっても兄は、なぜ食われたのか理解しないような気がする。
「刹那やティエリアやアレルヤハレルヤは世話してるんであって、たらしてねぇーよ。おかしな変態と一緒にすんじゃねぇ。」
「それは、あれか? おかしな軍人と傭兵か? 」
「そう、そいつらは、よくわかんねぇーけど、変態だ。でも、俺がたらしたわけじゃない。あいつらが勝手に盛り上がっただけだ。」
「とりあえず、ケツは死守しろ。あいつらは、本気だ。」
「わかってるよ。」
 兄は、大笑いしつつ包装紙を外した。こいつは、どこから食うつもりだろうと思ったら、すかさず頭からガブリと齧りとった。無残に、ひよこは首から下だけになっている。
「え? 」
「『え? 』って何? 」
「普通、頭は外すだろ? 」
「まんじゅうに頭も尻尾もないだろ。ただのまんじゅうだぜ? ライル。」
「まあ、そうだけど。」
「うまいよ? 」
「うん。」
 尻尾のほうから、小さく齧りとった。中は白餡で、疲れた身体には程よい甘さだ。すでに、兄は、ガブガブと全部を口に入れている。

・・・そうだ、ニールは大雑把なんだ。こいつには、ひよこが可哀想とか思う神経はないんだった・・・・


 ニールにとって、まんじゅうは食い物という範疇にあって、その形で生き物を想像するとかいうことはないのだ。だから、どこからでも食いつけるらしい。すかさず、二個目に手を出している。それも、頭からだ。なんだか、ひよこの「痛い、痛い。」 という悲鳴が、俺には聞こえる。
「甘すぎる? 」
「いや、うまいよ。でも、形がさ。」
「これ、可愛いよな? 明日、刹那にも分けてやろう。・・・おまえも、どっかに持って行くか? 」
「職場に持って行くには数が足らないな。」
「ああ、そうか。じゃあ、こっちで適当に処分する。」
 二つ目も、もぐもぐと食べて、ニールはコーヒーを飲んでいる。俺は、まだ一個目だ。形は考えないようにして、口に放り込んだ。疲れていると、この甘さは、しみじみと美味い。双子なんだけど、感性の違いっていうのはある。甘い後味を、ブラックのコーヒーと流し込んだら、俺は立ち上がる。
「寝るのか? 」
「ああ、明日も仕事なんで。てか、兄さん、三つ目はやめとけ。あんた、腹廻りが緩くなってるぞ? 」
「・・うっ・・・・」
「俺と同じジムに行こうよ? ちょっとは身体、動かさないと。メタボ一直線だ。」
「別にいいよ。金かけてまで健康維持するのはバカらしい。」
「メタボでデブの兄なんか、俺がイヤなの。双子なんだから、同じようにしてくれないと、俺まで価値が下がるだろ? そこんところは考えろ。」
 使用前使用後のような有様になったら、俺はイヤだ。というか、ニールには同じような体型を維持してもらいたい。見た目に優しくないニールなんか、見たくもない。
「へーへー節制します。」
 ニールもコーヒーを飲み干すと立ち上がる。この家には、基本、二人なので、寝室も並んでいる。階段を昇り、隣同士の寝室に、「おやすみ。」 と、声を掛け合って入った。どうやら、今夜もニールの貞操は無事だったらしい。