朝食を食べれる幸せ
「アルフレッド~、アルー起きろー!!」
アルフレッドの家のキッチンに立ち込めるそれとなくいいかおり。パンがトースターで焼けたことを知らせるチンッという軽快な音。何かまだ作っているのか彼はキッチンから大切な恋人に大声で起こす。
「アルー!っておいピクシー、ジャムをなめるんじゃねぇ!!ユニコーンシリアルを食うな!!それはアルの朝飯の一つなんだぞ」
彼特有の妖精との対話をしながらアルフレッドの朝食を準備をしているらしい。アルフレッドの寝室からでもその声は聞こえた。うるさいなぁとかぼやきながらもアルフレッドは、くすぐったい満たされた気分になる。
アーサーと同じ場所で朝を迎えることができるようになってからアルフレッドは、毎日がビー玉を太陽に当てたようにきらきら輝いていた。しかもそれは一つのビー玉でなく瓶に入ったたくさんのビー玉を太陽に当てたような。
眼鏡をかけ、スリッパを履き下の階に降りるとふわりと出来立ての朝食の香りが鼻を掠める。
「アーサー、おはよう~」
「おう、アルおはよう。わりぃな、ユニコーンがシリアルをきにいちっまって」
「?君のくれたあのユニコーンがかい?」
ユニコーンと言えばアルフレッドの中では、神秘的な馬だ。ペガサスもそれに近い。
しかし、馬が食べていいのか。原料はコーンだから大丈夫だろうが砂糖は、食べてよかったのかと疑問がいくつも出てくる。
「アル?どうした」
「っ!!」
考えていた途中のその声に思考が停止した。至近距離でアーサーがのぞきこんでいたのだ。本来なら見惚れることなどないのに考えごとで気付かなかった。
あまりのことに驚いて顔に熱が集まり、赤く暑くなっていく。アルフレッドの変化を間近で見たアーサーはにこっとわらうと一言優しく言う。
「お前、本当にかわいいなぁ。前からかわいかったけど最近は、余計かわいくなった」
彼は、一体昔どれだけの女性を口説いてきたのか聞きたくなった。
「アーサー、今日はどうしたい?近くの公園でフリーマーケットがあるぞ!!前に行っただろう」
「そうか、前行ったときはいいオルゴールがあったな」
「確かエロゼのためにだったっけ?」
「お前、それジャガイモ野郎たちに言うなよ」
「そうかい?わお!!このベーコンうまく焼けてる!!」
「おいこら!!それどういう意味だよ!?」
そうやってじゃれながら朝の賑やかな時間は過ぎていく。二人が朝食を食べ終わるとアーサーは、立ち上がり朝食の片付けを始めた。食べ終えた食器をまとめキッチンに行く。アルフレッドはなんとなく離れがたくなりアーサーの後ろに着いていく。
「アーサー」
アルフレッドがアーサーの名前を甘えるように呼ぶ。
そしてアーサーにのし掛かる。うげという声となんとか持ちこたえキッチンのシンクに手をついて体を支えている。
「なんだよ…」
「愛してるんだぞ!!」
恨めしげな目と声で返事をしたアーサーがアルフレッドのその告白に顔を赤らめた。
その反応にアルフレッドまで恥ずかしくなり互いに顔を赤面させた。
それは何気ない朝の出来事。