モータープール
「…バカな……」
紙に包み込まれていたのは、進攻の前の晩、イシルドゥアがエルロンドの髪から外していった髪飾りだった。
「ならば何故あの時、共に生きようと言わなかったのだ!愛する者のいない世界で、一人で生きるのは辛いとでも?…どうしてそうなのだ、お前は。私の…私の気も知らないで」
蝶の片羽の形を模した髪飾りの片割れは、今も彼の髪にある。十年経って、蝶は元の姿に戻った。
「なんとバカなことをしたのだ、お前は」
叫んでも、答える者はいない。エルロンドの脳裏で、イシルドゥアの笑顔が、翻った。