艦これ知らない人がwikiの情報だけで夕張書くとこうなる。
食べるのは早いなぁ。
そんな感想を呟くと、夕張は蕎麦をすする手を止めて抗議の言葉を連ねた。
「食べるの『は』!?『は』って何!?他はどうだと言いたいの!?言いたい事があるなら、はっきり言ったらいいじゃないですか!」
失言だった。重武装故のデメリットを意外と自覚しているのだ。
他意が無い事を示すために、話題を変えよう。
そこまで言うならはっきり言わせてもらうが…ほっぺたに付いている蕎麦の切れ端は、新しい兵装かい?
そう言ってやると、夕張は素早く自分の頬を確認して、蕎麦の切れ端を回収した。
「流石の私でも、顔面に装備は積みません。…いや、ひょっとしたらアリなのかしら?なるほど…突貫用の銛を鼻先に備えた船を見たことがあるわ。でも、砲をそこに備えるメリットというのはあるのかしら。提督はどう思いますか?」
普段なら夕張のそうした発言は素で、「やりかねないから止めよう」と思うところだが、今は違った。僕は夕張の言葉に返事も返さず、笑みが浮かんでしまうのを止められずに夕張の様子を見ている。
夕張は何か言いたげな顔だったが、諦めて蕎麦の続きに取り掛かった。
…さすがに恥ずかしかったのだろう。蕎麦の切れ端を回収した直後に夕張がまくし立てた「顔面兵装論」も、真っ赤になった顔を見ていれば取るに足らなかった。
「御馳走様でした。」
静かに手を合わせる夕張。しっかり食べる女の子を見ていると気持ちがいい。
僕もちょうど食べ終わったので、一緒に手を合わせた。
「提督。午後の予定は?」
夕張の質問に、僕は答える。「読書」と。
夕張はつまらなそうな顔で、「改装とか」と呟きかけて止めていた。はっきりと「私に新兵装を積みましょう!」と言われていたら、僕は蕎麦兵装の話を蒸し返す気でいたから、夕張の判断は正しかった。少し残念でもあるが。
この本だよ、と取り出して見せる。夕張はすぐに察した様子で、本と僕を交互に見た。その目の輝きは言葉では言い表せない。
「平賀先生の設計理論が載ってますよね!」
平賀氏に関係する本なら多少は興味を示すかと思って、何の気なしに見せてみただけなのだが…夕張は心中でどんな想像を巡らしているのだろうか。この本で平賀氏なりの設計様式を学んだ僕が、彼女に更なる兵装を積むと思っているのかもしれない。
しまった。迂闊な事をしただろうか。
「提督…期待してますよ!」
やばい。満足げにどこかへ行ってしまった。
…まあ、仕方ない。せいぜい僕もこの本で学んで、彼女にこれ以上装備が可能かどうかを判断するとしよう。
駄目なら駄目で、それもまた仕方ない。文句を言われたら「蕎麦を装備してやる」とでも言えば、彼女はきっと黙るのだから。
作品名:艦これ知らない人がwikiの情報だけで夕張書くとこうなる。 作家名:エルオブノス