艦これ知らない人がwikiの情報だけで大鯨書くとこうなる。
大鯨の輸送任務を視察してみたところ、玉ねぎや馬鈴薯の輸送どころか調理まで自ら行っている。本人は「輸送だけして後は皆さん任せというのは、無責任ですから」と言うが…まあ本人がそうしたいと言っているし、周囲も喜んでいるので特に止める理由もない。
「今日のおゆはんは、肉じゃがですよー。」
皆の期待の眼差しは、望んだ通りの戦果を上げたらしい。大鯨の言葉に誰も彼も喜んでいる。
ところで、肉類の備蓄は十分なのだろうか。生肉は輸送できないから、現場の備蓄分に頼る事になる。補給任務で来たのに備蓄を消費してしまっては、本末転倒だ。
「ご心配なく。輸送用に長期保存処理をした肉類も、ちゃんと運んできましたから。」
なるほど、干し肉か。それなら備蓄の心配はいらない。
…干し肉で作る肉じゃがは美味しいのだろうか?
「手前味噌ですけど、提督も召し上がったら分かりますよ。牛肉は干し肉に向きませんから、豚肉を使う事になりますが…お嫌いじゃなければ、是非。」
大鯨がそう言うなら、期待していいだろう。皆の表情も味の保証をしてくれている。
「まだ時間が掛かりますから、皆さんやりたい事があればどうぞ。出来たら呼びますよ。」
大鯨の言葉で、皆それぞれの目的別に散っていった。きっと全員、呼ばれるのを楽しみにしながら。
結局、視察の用しかない僕だけが大鯨の隣に残った。
それにしても、この和やかな雰囲気は何だろう。…と言っても、僕が普段いる鎮守府の雰囲気が悪いというのではない。賑やかで良い場所だ。
しかし、大鯨が補給任務に出た先は…いつもこうなのだろうか。まるで、そこに家族が生まれたようになっている。なんだか温かい。
「大鯨は、お母さんみたいだな」。
そんな感想を言うと、大鯨は複雑そうに笑った。
「お、お姉さんというわけにはいきませんか…。」
でも、母艦だろう?
「まあ…そうですねぇ。お母さんですか…。」
それは困ったような笑顔で…けれど、どこか嬉しそうでもあった。
補給任務を任される艦としては、やっぱり補給先で喜んでもらえるのは嬉しいだろう。子供の喜ぶ顔を嬉しく思う母親のようだ。
鍋を見ながら少し考えていた大鯨は、急に明るい顔になって僕を見る。
「…そうですよね!わたし、皆さんが笑うと嬉しいんです。それってやっぱり、お母さんみたいですから。」
ふふ、と大鯨は笑う。
僕も笑う。なんだ。大鯨も、僕と同じ事を思ったんだ。
「よーし、そうと決まれば。子供の皆さんが楽しみにしているおゆはん、大鯨が腕によりをかけて作りますよ!」
なんて頼もしいお母さんだろう。一方の僕は、今は何もしてやれない。料理に対して僕が出せる指令なんて無いのだ。そういう点を考えると…。
仕事の時間以外はお母さんに任せてのんびりしてる僕は、さしずめ休日のお父さんだね。
深い意味もなく、そんな言葉が出た。
大鯨は「えっ」と小さく言って僕を見て、顔を真っ赤にする。「そうですね」と消え入りそうな声で言って、鍋に視線を戻して口をつぐんだ。
どうしたんだろう。…なんて、思わない。
さっきの言葉を言った直後、僕だって多分大鯨と同時に、その意味に気付いた。何てことを言うんだろう、この提督は。
大鯨が腕によりをかけた夕飯ができるまで、僕も大鯨も黙ったままだった。
ただ…たまに大鯨が顔を上げて、僕を見てニコニコ笑う。僕も笑い返す。言葉は無い。
それを嬉しく思ってしまう僕は、本当に提督という役職をやっていていいのだろうか。特定の艦に肩入れするようでは、全ての艦に責任を持つ提督業は円滑に進まない。
しかし、そういえば、今の僕は休日のお父さんだ。職務中でないなら、このくらいは…どうか、許されないだろうか。
照れくさそうに、けれど幸せそうに鍋を見つめる大鯨。それを見守る僕は今、他にないくらい気持ちが澄んでいるのだ。
作品名:艦これ知らない人がwikiの情報だけで大鯨書くとこうなる。 作家名:エルオブノス