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かわいくない弟妹24時 Case1

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 尚がリビングへ顔を出すと、テレビの前に鎮座する二つの頭が合った。
「何見てんの?」
 冷蔵庫を開けながら疑問を投げかければ、母親から有名なテレビ番組のタイトルが返ってきた。番組改編時期にやっている、不思議な話をテーマにして短いドラマを流している番組だった。
 そういえばクラスの中でも話題になっていたなと思い出す。結構、怖い話もあったはずだと。
 テレビの画面がコマーシャルに変わったところで、尚は麦茶のグラスを片手に二人の背後に立つ。
「奈々はそろそろ寝る時間だろ。録画にして早く寝なさい」
 一つの話が終わったところだろうと言えば、えー、とテンションの低い声が返ってくる。明日、幼稚園で眠くなって困るのは自分自身だろう。
「司も、そろそろ怖い話になって夜に一人でトイレに行けなくなっても知らねぇからな」
「何歳だと思ってんだよ。そんなことあるわけないじゃん」
 つん、とそっぽを向いてコマーシャルの終わったテレビに食い入るように見入る。
 どうせ兄の言うことなんて聞くわけがない弟妹に、尚は嘆息を吐く。母親の叱る声がいつ聞こえるのか考えながら、テスト勉強をするために部屋に戻ることにした。

 勉強が一区切りしたところで時計を見れば日付も変わっていた。そろそろ終わろうかと背伸びをすれば、コンコンと控えめなノックが聞こえた。
「あ?」
 こんな夜中に誰だ。手嶋野家では基本的に就寝時間は早く、尚以外の家族は寝静まっているはずだった。たまに起きているのは、父親くらいだ。
 ドアを開けて、視線を下げれば弟と目が合った。
「どうした、司。こんな時間に」
 つか、まだ寝ていなかったのかよとため息が漏れる。
「尚兄、トイレ行きたいから下までついてきて」
 言うのが恥ずかしかったのか、司はうつむき加減に言った。尚はすぐに理由を察した。
「もー、怖くなるからやめとけって言っただろ」
 怖い映画やドラマ、アニメを見た日はいつもこうだった。いつもならぐっすり寝ているのに、トイレが近くなのか寝付きが悪くなるようだ。いざトイレに行くにしても、いつも過ごしている家であっても暗いことそのものが怖いらしい。親が寝ている部屋よりも尚の部屋が近いせいかいつも助けを求めるのは尚だった。
「違うって、怖くないよあんなの。ただ、今日はいつもより家の中が暗いから」
 司がむっとした表情で言う。
 真っ暗なのはいつものことで気のせいだと思っても、あまり強く言ってやるのをやめる。
「わかったわかった」
 仕方ないとあきらめて、階段の電気を付けてトイレまで付き合ってやる。
 怖いからついてきてと素直に言えばまだかわいいものを。かわいげがないのはいつものことだ。
 流水音が聞こえて出てきた司とまた部屋のある二階まで戻る。部屋まで送ってすぐに寝るように言えば、司に服をくいと引っ張られた。
「尚兄、ありがと。おやすみ」
 素っ気なく閉められたドアに、尚は頭をかいた。
 ちょっとはかわいげが残ってるかな。