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葉音~すえなり~2

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      葉音〜すえなり〜
                            B.R.
 ふと戸を叩く音が聞こえた気がした。
「緑里、誰か来たみたいだけど?」
 隣で私と同じく包丁を握りながら大根を切っている緑里に声をかける。
「千布ちゃん見て分からないかしら?私、今両手が塞がっちゃってるのよ〜」
 アタシも同じく野菜を切ってはザルに放り投げているのだけどね。
「悪いけど千布ちゃん見てきてもらっていいかしら?」
 動く様子の無い緑里に私は「はいはい」と仕方なさそうに腰巻を外しながら台所を出る。
廊下に出ると台所のほうから「よろしくね〜」と間延びした緑里の声が聞こえる。
それにしても毎度毎度思う事なのだが、雰囲気を大切にすることも必要だけどドアチャイムの一つも付いていないと言うのは問題だと思う。
比較的に玄関から近い位置の台所という場所に居たからこそ今回は戸を叩くという音が偶然耳に入ってきたが、誰も玄関傍に居なかったりして大切なお客さんを待たせるような事になったらどうするのだろう。
アタシも緑里もオチオチ一緒に昼寝の一つも出来やしない。
「……まぁ時間があっても緑里と並んでお昼寝なんてしないだろうけどね」
 ハハハと自分の言ったことにつまらなそうに笑う。
なんて馬鹿なこと考えながら一人ツッコミしてゆっくりとしてるアタシもアタシか。
まぁまぁ今日は御予約されたお客さんもないし、十中八九で例の娘だろう。
  ――バンバンバン!
玄関の傍までやってくると再び戸を叩く音が聞こえる。
人の様子はあるけど出てこないから不思議に思っているんでしょう、いくらお客さんでなくてもあんまり待たせるのもかわいそうよね。って思うのは当然かしら?
「はいはーい!今開けますよー」
 アタシはサンダルをつっかけながら玄関の鍵を開けガラガラと戸を開ける。
「あっ!あの、こ、こんにちわ!……です」
 扉を開けると面食らった様子で手を慌てふためかせながらぎこちなく挨拶をする女の子が立っていた。
身の丈は電話で聞いてたより大きな気がするね。気は少し小さいみたいだけど。
「はいはいこんにちは、遠いところからよく来たね。お疲れさん」
 アタシはわざと砕けた感じで挨拶を返す。まぁ年長者なりの気遣いってヤツね。
「は、はい!ご丁寧にありありがとうございます!」
「っとと!そんなにかしこまらなくてもいいじゃないのよ、とって食おうってわけじゃないのよ?」
 アタシの砕けた感じに反して深々と頭を下げる女の子に今度はアタシが面をくらってしまう。
「まぁ、なんだ。玄関先で立ち話ってのもなんだし」
 「ほら」と背に手を置き中へ入るように促すと女の子は小さめな体を更に小さくして申しわけなさそうに家の中へと入る。
「靴はとりあえず適当に脱いで大丈夫よ、スリッパはそこのを履いてね」
 アタシは戸の鍵を閉めながら開いた手でスリッパを指す。
「お、おじゃまします」
 女の子は玄関に腰を下ろしてスニーカーの紐を解きながら小さく会釈をする。
なかなか硬さは取れないねぇ。まぁ会って五分も経ってないんじゃ当然なのかな?
アタシの若い頃は……なんて年の差でもないけどね。
って、そういえば
「玄関まであげて今更かもしれないけど名前聞いて無かったよね?」
 襟首をかきながら女の子に質問する。
「え?あ、あの――」
「あ!いや前に電話でね!こんな娘なんだよ〜ぐらいは聞いて、もちろん名前も聞いたんだけどね!ほら一応……というか本人の口から聞くべきかなー?って自己紹介みたいな意味も含めてさ」
 アタシの質問に「もしかして事前になんの連絡も言ってないの?どどどうしよう!」見たいな顔で驚く女の子に取り繕うようにアタシは言葉を並べる。って言うかちょっと泣きそうだった。道中で何があったっていうのこの娘。
「あ、そ、そうだったのですか、びっくりしました」
 女の子は肩を落として胸を撫で下ろす。そして小さく息を吸い今までで一番深いお辞儀をしながらこう続けた―
「赤築相茶です!これからお世話になります!」
 なにもなく見る人によってはくだらなくも感じるであろう最高の時間が始まった音がした・・・・・・
作品名:葉音~すえなり~2 作家名:B.R